今回の記事タイトルを見て、「何を言ってんだ」と怒りを覚えた読者のうち、一部の人たちにはあらかじめおわびしておきたい。私が「極言暴論」でそのアホウぶりを描いているIT業界は、あなた方が思う、あるいは所属しているIT業界を指してはいない。つまり、ITベンチャーなどがクラウドを活用した独自サービスで勝負する健全なIT業界のことではなく、ご用聞きのSIerを頂点とする多重下請け構造の不健全なIT業界のことだ。

 「だったら、そんな不健全な連中の世界をIT業界と呼ぶのをやめてくれないかな。いい迷惑なんだよね」と不満に思う読者もいるかもしれない。実際、ITベンチャーの人に面と向かってそう言われたこともある。だがしばらくの間、それはできない。多重下請け構造のIT業界の歴史は長く、日本において今も多数派だ。なんせ昔はコンピューターメーカーとしてブイブイ言わせていたIT企業までがSIerと化し、多重下請けの元締めに納まってしまったぐらいだから。

 はっきり言えば、私も一刻も早く「ITベンチャーなどがクラウドを活用した独自サービスで勝負する健全な業界」だけをIT業界と呼ぶようにしたい。なぜなら、グローバルではそれが本来のIT業界だからだ。もっとはっきり言えば、多重下請け構造の業界は「IT業界のイミテーション(模造品)」にすぎない。ハイテク産業とは似ても似つかない人月商売、つまり人海戦術しか能がない労働集約型産業だからだ。

 冒頭からわき道にそれたが、この記事の本題にも関わるのでご容赦いただこう。今回、私が言いたい内容はまさに記事タイトルの通りだ。イミテーションのIT業界、つまり多重下請けという原始的な労働集約型産業を日本から除去するような、国の政策が必要ではないかという論だ。実は当初、この記事は極言暴論の中でも最も暴論になると思っていたのだが、ここまで書いてきて、むしろ正論すぎると気が付いた。

 そもそも「手配師」や「人売り」と皮肉られる下請けITベンダーの経営者と経営幹部を除けば、人月商売のIT業界のほぼ全ての関係者が「人月商売を続けていてはマズイ」と思っている。それゆえ除去するのは何の問題もないはずだ。そして何よりも、技術者という貴重な人的資源の無駄遣いをもはや看過できない。一刻も早くこの原始的な労働集約産業を“強制終了”しなければ、日本の競争力は地に落ちてしまう。