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 かつてホンダとヤマハ発動機が2輪車市場の主導権を激しく争った「HY戦争」――。両社のイニシャルからこう呼ばれた覇権争いが、約40年の時を経て新たな形で再燃しようとしている。舞台は電池「交換式」の電気自動車(EV)スクーター、そして交換式の電池パックや交換ステーションである(図1)。

 EVスクーターの利便性を高める同仕組みは、電池交換サービスという新たな収益の源泉を車両メーカーにもたらす。世界各国に交換ステーションを設置して“陣取り合戦”を制したい両社であるが、HY戦争に固執すると足をすくわれる。海外勢は既に一歩先を行く。

図1 ホンダとヤマハ発動機が電池「交換式」電気自動車(EV)スクーターの開発に注力し始めた(各社の発表資料を基に日経 xTECHが作成)
図1 ホンダとヤマハ発動機が電池「交換式」電気自動車(EV)スクーターの開発に注力し始めた(各社の発表資料を基に日経 xTECHが作成)
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 モビリティーにおける電池交換式の仕組みは、着脱式の電池パックを交換ステーションに挿入して充電し、複数の電池を多数の利用者で使い回すというもの。利用者が得られる利点は大きく3つ。(1)車両の非稼働時間を短縮して連続で使いやすいこと、(2)技術の進歩に合わせて電池を改良して載せ替えやすいこと、(3)1個の電池を多用途に使い回せるため、車両の価格を下げやすいこと――である(関連記事:ホンダとヤマハ発が進出、電池「交換式」EVの3つの利点)。

 新たなHY戦争で先行するのがホンダだ。車両だけでなく、電池パックや交換ステーション、電池交換サービスまで自社で開発を手掛ける。交換ステーションの配備や電池のシェア事業に関しては、既に東南アジアで実証実験を始めている。商用サービスを本格展開する場合は「定額制を検討することになりそうだ」(ホンダ)という。電池パックを定額で使い放題にするサブスクリプション型のサービスは、スマートフォン(スマホ)の利用料金でもうけるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった通信キャリアのように、1年を通して安定的に収益を得やすい。