歩道上の並木を間伐し空いたスペースをにぎわい創出の場に
兵庫県のJR姫路駅から世界遺産の姫路城へと続く「大手前通り」の南工区約400mに、歩いていて飽きのこない歩道が完成した(写真1、2)。イチョウ並木の両側に歩行者と自転車の動線を分散配置して、舗装の仕上げを変えている。レンガや木、歩道ブロックが混在しながら、雑多さを感じない洗練されたデザインが印象的だ。自転車と歩行者の動線が交錯しやすかった整備前の課題を、デザインで解決した(写真3)。
「歩道には地下出入り口や車止め、モニュメントなど、空間を構成する要素が多かった。煩雑にならないように、デザイン検討会議でプロポーションや細かなディテールを詰めていった」。デザイン監修を担当したナグモデザイン事務所(東京都渋谷区)の南雲勝志代表はこう話す。例えば、地下駐輪・駐車場の出入り口の改修では、細い部材やガラスを多用するなどして存在感を軽減した。
大手前通りの歩道は幅員約15mで、もともと広い。設計を担当した日建設計シビル(大阪市)の開発部門設計部の八木弘毅氏は、計画当初を次のように振り返る。「駅から城に向かって通過するだけの道になっており、もったいないと感じていた。長時間、滞留できる場をつくれば周辺エリアに回遊性が生まれ、街全体を大きく活気付けることにつながると考えた」。
そこで、圧迫感のある箇所を中心に樹木を間引いて、新たに生まれたスペースを、休息やにぎわい創出の場として活用した。
特に目を引くのが、姫路市産のスギで仕上げた歩道のウッドデッキの空間だ。商業施設が集積する「商業にぎわい・活用ゾーン」を中心に5カ所に配置(図1、2)。このうち4カ所は100m2の広さを持つ。沿道店舗のオープンカフェやマルシェの出店、イベントを想定した。
「ウッドデッキは、車ではなく人のための『たまり場』だと一目で分かる。傷めば交換できるし、足触りもいい」と、デザイン監修を担当した小野寺康都市設計事務所(東京都千代田区)の小野寺康代表は話す。
駅を出て初めに通る駅寄りの区間は、「外曲輪(そとくるわ)・おもてなしゾーン」と位置付け、城へ向かおうとする人たちが楽しめるように、イチョウ並木の間に、花壇やベンチを配置した(写真4)。
設計段階では、これら滞留空間の実現に向け、関係者との合意形成に時間をかけた。姫路市が立ち上げた検討懇話会は専門家の他、地元団体や自治会、警察も参加。ワークショップ形式で議論を掘り下げ、コンセプトを共有した。さらに、2週間の社会実験では現地で様々なイベントを試み、課題を抽出して実施設計に反映した(図3)。
市建設局道路建設部街路建設課の内藤隆弘係長は、「ウッドデッキは日常的に、沿道店舗のオープンカフェなどに使ってもらえるようにしたい」と意気込む。