日経メディカルのロゴ画像

Ann Intern Med誌から
重症度が異なる一卵性双生児のCOVID-19症例
遺伝要因も環境要因も同じと思われる2人の患者の経過を分けた理由は?

 イタリアIRCCS Fondazione Don Carlo GnocchiのDavide Lazzeroni氏らは、外見や個人的特徴から一卵性双生児と見なされた2人のCOVID-19患者の特徴について、症例報告を行った。2人の住所は同じで、職場も同じであり、同一人物から同じタイミングでSARS-CoV-2に感染したと考えられたが、1人は軽症で、もう1人はICU入院を必要としたという。結果は2020年12月8日にAnn Intern Med誌電子版に掲載された。

 COVID-19に関する情報は急速に蓄積されつつあるが、多くの患者が無症状または軽症で済むのに、なぜ一部の患者が重症化するのか、両者の違いは明らかではない。著者らは遺伝的にも環境的にも多くの要因が共通と考えられる一卵性双生児の症例が、こうした疑問の考察に役立つと考え、症例報告を行った。

 2020年3月9日、一卵性双生児と見なされる60歳の男性2人に発熱と鼻づまりが生じた。その後に疲労感、息切れ、乾性咳嗽が現れて、発症から11日目に入院した。入院時点で鼻咽頭スワブによるRT-PCR検査を行ったところ、SARS-CoV-2陽性だった。2人とも、慢性疾患の病歴はなく、心血管疾患の危険因子もなく、長期的な治療を受けていなかった。

 2人は同じ住所に住んでおり、同じ自動車修理工場で修理工として働いていた。接触者追跡を行ったところ、修理工場を訪れた顧客がSARS-CoV-2に感染しており、2人は、感染予防策を取らないまま、その顧客と濃厚接触していたために感染したと推定された。

 2人の男性患者の入院時の症状に差はなく、いずれも軽症の間質性肺炎と診断された。ただし、その病院へのCOVID-19患者の入院が急増していた時期の入院だったため、用いた検査は同一ではない。患者1の間質性肺炎という診断は、肺エコーでB-linesが認められたことと、X線画像において両肺底部にすりガラス様陰影が見られたことにより下されていた。患者2には肺CTスキャンが行われ、両側肺の25%を占める多巣性のスリガラス影が検出されていた。

 入院後2週間は、同じメンバーからなる医療チームが両者の治療に当たった。酸素補充療法、アセトアミノフェン、ヒドロキシクロロキン、ダルナビル・コビシスタット(抗HIV薬)、予防的な用量のエノキサパリンが適用された。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

この記事を読んでいる人におすすめ