電気自動車(EV)用の全固体電池の実用化に、トヨタ自動車が本気だ。同社は、2020年代前半にまず、数量限定で既存電池の性能を超える全固体電池を実用化。その後、高性能化と大量生産技術の確立を目指す。2030年までにEVがエンジン車並みの競争力を持つ可能性が出てきた。
「全固体電池は(EVの)航続距離を飛躍的に改善するポテンシャルからゲームチェンジャーになり得る技術だと考えている。200人を超える技術者とともに、2020年代前半の実用化を目指して開発を加速している」―。2030年以降との見方が大勢を占めていたEV用の全固体リチウムイオン電池(以下、全固体電池)の実用化が、一気に前倒しとなった。
発言の主はトヨタ副社長のディディエ・ルロワ(Didier Leroy)氏である(図1)。2017年10月開催の東京モーターショーで明かした。同社はさらに、同年12月13日に、パナソニックと全固体電池を含む車載用角型電池事業に関する協業を検討すると発表。同月18日には、同社副社長の寺師茂樹氏が、「トヨタの電動車普及に向けたチャレンジ」の説明会の中で全固体電池の2020年代前半の実用化を改めて表明し、同社の本気度を強調した。
さらに、同社の本気度をうかがわせるのが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が立ち上げた、車載用全固体電池の開発にオールジャパン体制で取り組むプロジェクト「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」(2018~22年度)である(図2)。実は、同プロジェクトをリードすると目されるのがトヨタ。同社で全固体電池の開発を引っ張ってきた一人である石黒恭生氏を、プロジェクトリーダーに送り込む。同社電池材料技術・研究部担当部長の射場英紀氏は、トヨタがいかに本気かが分かるはずとほのめかす。