硫化物系の固体電解質と層状酸化物系の正極材料を使った全固体電池―。トヨタ自動車が2020年代前半の実用化を目指す電池だ。その基盤となるのが、セルの内部抵抗を下げるためのコーティングや製法に関する四つの技術。内部抵抗の低減は、出力密度やエネルギー密度の向上につながる。
2020年代前半に世界に先駆けて全固体電池の実用化を狙うトヨタ自動車─。その基盤となる技術が明らかになった。全固体電池は当初、内部抵抗が大きく出力密度が低いことから、車載用電池としての適用は厳しいと考えられていた。そこに風穴を開けたのが、ここで紹介する内部抵抗を下げるための同社の技術である。出力密度が低いと、セルの設計上で出力密度とトレードオフの関係にあるエネルギー密度も上げにくい。
同社電池生技開発部主査の岩瀬正宜氏によれば、同社は同基盤技術によって、セルの体積出力密度を約2.5kW/Lに、同体積エネルギー密度を2010年ごろのリチウムイオン電池(LIB)の2倍の約400Wh/Lに引き上げることに成功した(図1)注1)。そのセル性能は現状の先端のLIBには及ばないが、現在はLIB超えを前提に実用化に向けた開発を進めている。
注1)同セルの質量エネルギー密度は185Wh/kg。
同社が、2020年代前半の実用化で念頭に置いている全固体電池は、固体電解質の中でも現時点ではイオン伝導度が高いとされる硫化物系の固体電解質を使ったものだ(図2)。正負極材には、当面は現行のLIBで主流の活物質を活用する考えという。具体的には、正極は層状酸化物系〔コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム(NMC)、ニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム(NCA)など〕を想定。負極は炭素系などを候補と考えているようだ。