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 トヨタ自動車は将来の電気自動車(EV)の要素技術として、インホイールモーター(IWM)の検討を継続している。「第46回 東京モーターショー2019」(一般公開:2019年10月25日~11月4日)で同社が示したEVコンセプト車で、IWMを採用した2車種を初公開した。1つはトヨタブランドの「e-RACER」。もう1つは高級車ブランド「レクサス」の「LF-30 Electrified」だ。近い将来に実用化できる可能性があると見ている。

電動化の解の1つとして採用

 レクサスが公開したのは、2030年ごろのEVの在り方を考えたコンセプト車「LF-30 Electrified」(図1)。その車両でIWMを採用した。

図1 レクサスのEVコンセプト車「LF-30 Electrified」
図1 レクサスのEVコンセプト車「LF-30 Electrified」
2030年ごろのEVの形をイメージして提案。(撮影:日経Automotive)
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 レクサスは電動化に力を注いでおり、2019年11月にレクサス初となるEVを発表する予定である。さらに、2020年代前半にはPHEVやEV専用モデルを投入。2025年には全ての車種で電動化モデルを用意する計画とした。LF-30 Electrifiedは、レクサスの電動化を象徴するコンセプト車という位置付けだ。

 コンセプト車の開発では、「電動化を切り口に車をどう進化させるかを、将来のモーター技術の進化を想定しながら考えた」(トヨタ商品企画主査の渡辺剛氏)。レクサスの場合、その1つの解としてたどり着いたのがIWMだった。

 モーターの場合、アクセルペダルを踏んで車輪に力が伝わるまでの時間がエンジンに比べて短い。そのため、応答性が高い駆動力制御を実現できる。レクサスの場合はこれをさらに突き詰めて、4輪に備えたIWMでトルクを制御し、運転者の狙い通りに車両姿勢を制御することを想定した。

 駆動トルク制御として一般に、ブレーキを活用する手法がある。だがエネルギー効率で見ると、「ブレーキを使うことは熱エネルギーとして損失していることになり、効率が悪いと言える」(渡辺氏)。コンセプト車での採用は見送った。エネルギー損失の少ない4輪駆動制御として、IWMが適していると判断したという。

 「ばね下質量が重くなることや対応プラットフォームの開発などの課題があるが、今後モーターなどの技術開発が進めば解決できる。決して遠い将来のことではない。2030年を見据えた時に、IWMの活用も前提にできるという考えに至った」(渡辺氏)。