村谷機械製作所(本社石川県金沢市)は、高精度なレーザークラッディング(肉盛溶接)を実現する「ALPION」を「第29回日本国際工作機械見本市JIMTOF 2018(東京ビッグサイト、2018年11月1~6日)」で初出展した(図1)。薄膜を精密に形成できるよう、独自開発したマルチビーム加工ヘッドを使用し、レーザー照射による加工部への熱影響を抑えた(図2)。

図1 「ALPION」
図1 「ALPION」
熱影響を抑えつつレーザーを照射するため、独自開発したマルチビーム加工ヘッドを適用している。
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図2 装置内部
図2 装置内部
NEDOのマークがある部分がマルチビーム加工ヘッド。
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 ALPIONの特徴は、加工ポイントに対して垂直方向から金属粉末を噴射しつつ、斜め上方向から複数のレーザーを同時に照射すること(図3)1)。従来のシングルビームだと、垂直方向にレーザーを照射しつつ、斜め上方向から金属粉末を噴射する。

図3 マルチビームによる金属粉末への照射
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図3 マルチビームによる金属粉末への照射
(a)のマルチビームは噴射した金属粉末に対し、2つ以上のレーザーが照射される。中央部は端部と比較するとレーザーを通る距離が短いが、複数のレーザーを受けるためにエネルギーの総量が変わらない。つまり、金属粉末の溶融状態が均一になる。(b)のシングルビームでは噴射面の到達位置に応じて、レーザーを通る通過距離に差が生まれてしまう。つまり、金属粉末の溶融状態が不均一になる。大阪大学の資料を基に日経ものづくりが作成。

 シングルビームの場合、基本的にはレーザービームで母材を溶融し、そこに金属粉末を投入して肉を盛る方式であるため、必然的に母材に与える熱影響が大きくなってしまう。さらに、金属粉末が金属表面に到達する前にレーザーに当たって受けるエネルギーが、粉末によってまちまちになり、母材に到達したときの粉の溶け具合も一定ではなくなる。垂直な円柱状のレーザービームに対して金属粉末が斜めから入るため、レーザー内を長く横断する粉とビーム内に少ししか入らない粉があり、レーザーを受ける時間に差が生じるのが原因だ。