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 太陽光発電の製造・施工などを手掛けるネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)が7月、矢継ぎ早に3件の提携を発表した。まず7月3日に東京ガスとの資本提携。7月25日に車載蓄電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と業務提携を発表。さらに7月31日に四国電力との資本提携を発表した。一連の提携、そして大手電力・ガス事業者からの出資受け入れは何を意味するのか。ネクストエナジー伊藤敦社長に聞いた。

TPOモデルに特化した蓄電池システムを作るためにCATLと提携した
TPOモデルに特化した蓄電池システムを作るためにCATLと提携した
写真左がネクストエナジー伊藤敦社長、右はCATLチーフカスタマーオフィサーの谭立斌氏。谭氏は「固定価格買取制度(FIT)が終わろうとしている日本は蓄電池に商機がある。現地企業と組んで日本市場にアクセスしたかった」と会見で語った

1カ月の間に一気に3件もの提携を発表しました。一連の提携の狙いを聞かせてください。

伊藤氏 当社の目標はただ1つ、日本の電源を石炭火力や天然ガス火力から分散型電源に変えることです。一連の提携はそのためのもので、戦略は極めて明確です。

 日本に分散型電源を最速で普及させるためのシナリオは、大手電力・ガス会社といった国内の電源の大半を保有するユーティリティ企業が自社電源として分散型電源を導入することです。この時、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた「第三者保有モデル」(TPO:Third party ownership)を活用します。

 TPOモデルは、資本力のある企業が太陽光や蓄電池などの設備を保有し、家庭や企業などの需要家の敷地に設置することを言います。需要家は初期費用ゼロで太陽光発電や蓄電池を導入することができます。需要家は再エネ電力を自家消費し、電気料金として設備を保有する企業にお金を支払います。

 これまでは大規模な火力発電所などを建設・運用し、ここで発電した電気を系統を介して需要家に供給してきました。ユーティリティ企業がTPOモデルを活用し、需要家の敷地に自らの発電設備を設置・保有することは、大規模火力を保有するのと構造的には同じです。分散型電源を活用して電気事業をするわけです。

 我々はユーティリティ企業が使いたくなるようなTPOモデルに特化した分散型電源を開発して販売します。あくまでTPOモデルを事業化する主役はユーティリティ企業です。ユーティリティ企業である東京ガスと四国電力は、当社の考え方に賛同していただき、資本提携するに至りました。

東京ガスと四国電力は、まさにユーティリティ企業。彼らと資本提携することでTPOモデルの導入を手伝うということですね。CATLとの業務提携はどういった狙いなのでしょうか。CATLといえば、車載用蓄電池の最大手。この7月にはトヨタ自動車とも包括的パートナーシップを締結しています。

伊藤氏 CATLは実力のある会社で非常にオープンなスタンスの企業です。CATLと共に、コスト競争力のあるTPOモデル特化型システムを構築します。当社製の太陽光パネルとCATLの蓄電池、そして現在選定中の海外メーカーのパワーコンディショナーを組み合わせてシステムを構築します。