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西村 仁
西村 仁
ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント

 前回に続いて穴開け加工を紹介します。穴径の精度を必要としない加工にはドリルを使います。ドリルで穴を開ける際には、ドリルの先端を誘導する小穴を被加工物(ワーク)に設けておく必要があります。この小穴がないとドリルの先端がぶれてしまい、正確な位置に穴を加工できないからです。

 小穴の加工方法には2通りあります。1つはセンタードリルで開ける方法で、もう1つはポンチで開ける方法です。ポンチは先端がとがったペン形状の工具で、ワークに対して穴を開けたい箇所にポンチを当てて、軽くハンマーで叩(たた)きます。こうしてワークに凹みを付けることで小穴にするのです。穴の位置には事前に十字の線を引いておきますが、鉛筆は線が太くなる上に金属表面には書きにくいため、先端のとがった「けがき針」で薄く傷を付ける(けがく)ことで十字の線を引きます。

 このように、ドリルでの穴開けの位置精度は、けがき位置のばらつきと、ポンチ位置のばらつき、そしてドリル加工のばらつきが重なります。そのため、位置精度はおおよそ±0.3mm前後が目安です。位置精度は緩くなりますが、前回紹介した通り、ドリルで開けるきり穴はねじ固定に使うため、この程度のばらつきは問題ありません。