車載Ethernetでは、現行の100Mビット/秒や1Gビット/秒の規格に加えて、10Mビット/秒や数Gビット/秒の規格化の動きが活発である。2018年6月に開催された関連イベントでも、その様子がうかがえた。同イベント内のJASPARメンバーによるパネルディスカッションでも議論された。司会進行は日経エレクトロニクス/日経xTECH編集記者の根津禎が務めた。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
(写真:今紀之、以下同)
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 「今後さまざまな自動車メーカーが車載Ethernetを採用していくだろう」。車載Ethernetの採用や普及促進、標準化にとりわけ力を入れてきたドイツBMWで車載ネットワーク技術の開発を主導し、業界のキーパーソンでもあるKirsten Matheus氏は、2018年6月に開催された車載Ethernet関連のイベント「自動運転の切り札、車載Ethernet」(主催:日経BP社)の講演で車載Ethernetの広がり具合をこう述べた。2013年の時点で車載Ethernetを採用したのはBMWだけだったものの、徐々に採用する自動車メーカーが増えて、日産自動車といった日本企業も採用を始めた。2018年以降はさらに採用企業が増える見込みである。

 そんな車載Ethernetにおいて、話題になっているのが、10Mビット/秒や数Gビット/秒の物理層の規格化である。既にIEEEでは、「IEEE 802.3bw(「100BASE-T1」)」に続き、1Gビット/秒の物理層「IEEE 802.3bp」が策定された。その次として、10Mビット/秒(以下、10メガ)や数Gビット/秒(以下、マルチギガ)の物理層に関する議論が活発である。

 加えて、L2(レイヤー2)向けの規格群である「Ethernet TSN」(IEEE 802.1 Time-Sensitive Networking)にも、引き続き自動車業界は注目している。その最大の関心事は、TSN内にある複数の規格のうち、どのようなユースケースを想定して、どれを選択して使うのか、という点である。

 日本において、こうした車載Ethernetに関する話題を議論する場が、車載電子制御システムのソフトウエアや通信ネットワーク技術の標準化などを目指す日本の業界団体「JASPAR」の「次世代高速LANワーキンググループ(WG)」である。前述の車載Ethernetのイベントでは、同WGのメンバーによるパネルディスカッションが開催された。10メガやマルチギガ、TSNなど、車載Ethernetに関するホットトピックの議論があった。以降は、その内容を紹介する。