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 米アマゾン・ドット・コムの関連会社であるアマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンと竹中工務店は2021年12月16日、竹中工務店がAWSのクラウドサービス「AWS」を全面的に採用し、建設プロセスのデジタル化を進めると発表した。竹中工務店が同年11月に運用を開始した「建設デジタルプラットフォーム」をAWSのクラウド環境に構築したことを明らかにした。

2021年12月16日に会見した、竹中工務店グループICT推進室長の岩下敬三氏(写真:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
2021年12月16日に会見した、竹中工務店グループICT推進室長の岩下敬三氏(写真:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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 建設デジタルプラットフォームは、竹中工務店がDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるためのシステム基盤である。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データはもちろん、営業から設計、施工、維持保全に至る一連の建設プロセス業務で発生するデータや、人事・経理など同社の事業に関わる全てのデータを建設デジタルプラットフォームで一元管理する。

「建設デジタルプラットフォーム」の概念図(資料:竹中工務店)
「建設デジタルプラットフォーム」の概念図(資料:竹中工務店)
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 そして、AI(人工知能)やBI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどを使って、建設業務の生産性向上につなげる。建物のデジタルツインの構築にも役立てる。

建設デジタルプラットフォームでデジタルツインを構築(資料:竹中工務店)
建設デジタルプラットフォームでデジタルツインを構築(資料:竹中工務店)
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 竹中工務店は22年度中に、全業務のデジタル化を図るという目標を掲げている。あらゆるデータを建設デジタルプラットフォームに蓄積し、AIの精度向上や適用範囲の拡大に努める。これまでは個別のシステムにデータをばらばらに保管していたため、活用範囲が限られていた。今後は業務や事業を横断してデータを集め、例えば、建物の設計や生産の実績から施工に必要な人員の予測精度を高める。

人員予測の例(資料:竹中工務店)
人員予測の例(資料:竹中工務店)
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 竹中工務店は24年末までに、200以上ある既存の業務アプリケーションをオンプレミス(自社内)環境からクラウドのAWSに移行する計画を立てている。これにより、建設デジタルプラットフォームとのデータ連携を容易にする。同時に、ITインフラにかかるコストを従来より25%以上削減することを狙う。

社内にある業務システムを建設デジタルプラットフォームと同じAWSに移行(資料:竹中工務店)
社内にある業務システムを建設デジタルプラットフォームと同じAWSに移行(資料:竹中工務店)
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 「デジタル変革により2030年に目指す姿」の実現に向けて、竹中工務店は建設デジタルプラットフォームと開発済みのスマートビル管理プラットフォーム「ビルコミ」、ロボットの自律走行や遠隔管理の基盤「建設ロボットプラットフォーム」などを連携させる。協力会社と共同で建設資材の搬入や据え付け状況のデータの集約と蓄積も進め、BIMシステムや建築生産変革の取リ組みである「竹中新生産システム」との連携も深める。

建設デジタルプラットフォームと様々な業務システムをAWSで連携させる(資料:竹中工務店)
建設デジタルプラットフォームと様々な業務システムをAWSで連携させる(資料:竹中工務店)
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 竹中工務店は、建設業に対して時間外労働の上限規制が適用される24年4月までに現実的な業務効率化の対応策を投入すべく、急ピッチで検討を進めている。AWSに構築する建設デジタルプラットフォームは、今後導入する全てのデジタル施策の基盤になる。