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JAMA Neurology誌から
大気汚染がアミロイドβ沈着を促進する可能性
PM2.5濃度が高い地域の高齢者はPET検査で脳にアミロイドが見つかりやすい

 米国California大学San Francisco校のLeonardo Iaccarino氏らは、認知障害がある高齢者のアミロイドPETスキャン検査結果と、居住地域の大気汚染状況(PM2.5濃度と地上オゾン濃度)の関係を検討し、地域のPM2.5濃度が高い地域に居住する高齢者ほどアミロイドPET陽性となる割合が高かったと報告した。結果は2020年11月30日のJAMA Neurology誌電子版に掲載された。

 アミロイドβの沈着はアルツハイマー病(AD)の特徴であり、蓄積レベルには大気汚染のような外来の要因が影響する可能性がある。大気汚染レベルの評価に広く用いられているのはPM2.5やオゾンの濃度だ。齧歯類モデルなどを用いた動物実験では、汚染された大気への曝露によって、アミロイドβの産生と沈着が増加することが明らかになっている。そこで著者らは、認知障害のある高齢者を対象に、アミロイドPET画像における陽性と環境大気の質の関係を検討するための横断的な研究を計画した。

 高齢者のアミロイドβの沈着状況は、Imaging Dementia-Evidence for Amyloid Scanning Study(IDEAS)のデータを利用することにした。IDEASでは65歳以上のMedicare受給者を対象にアミロイドPETスキャン検査を行っている。軽度認知障害(MCI)または診断が未確定の認知症患者に検査を実施することで、その後の治療法やアウトカムに違いが出るかどうかを調べるのが目的だ。IDEASには1万8000人超が参加しており、2016年2月16日から2018年1月10日までに、3種類のトレーサー(18F-florbetapir、18F-flobetaben、18F-flutemetamol)のいずれかを用いてアミロイドPETスキャンを実施している。

 患者の居住地の大気汚染レベルは、米国環境保護庁のDownscalerモデルを用いた観測データを利用することにした。観測対象はPM2.5濃度と地上オゾン(O3)濃度で、2種類の暴露期間を設定した。1つは、PET検査を実施する13~15年前(2002~2003年)の早期の汚染状況で、もう1つはPET検査を実施する0~2年前(2014~2015年)の後期の汚染状況だ。検証する仮説は、大気汚染物質濃度が濃い地域に居住している高齢者は、PET検査によるアミロイドβ沈着陽性と判定される割合が高いというものだ。

 主要評価項目は、大気汚染とアミロイドPET陽性の関係に設定し、人口統計学的特性、ライフスタイル、社会経済的要因、併存疾患(呼吸器疾患、心血管疾患、脳血管疾患、精神疾患、神経系疾患など)で調整して、オッズ比と限界効果を推定した。

 IDEASに参加していた1万8178人のデータを分析した。それらのうち1万991人(60.5%)がMCIで、7187人(39.5%)が認知症だった。平均年齢は75.8歳で、51.3%が女性だった。患者の居住地は米国の郵便番号を用いて、該当する地域の気象観測データを照合した。

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