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Lancet Healthy Longevity誌から
メトホルミンはCOVID-19女性患者の死亡率を下げる?
炎症や血液凝固を抑制する作用がCOVID-19患者の女性でも役立つ可能性

 米国Minnesota大学のCarolyn T Bramante氏らは、2019年に2型糖尿病または肥満と診断された経歴のあるCOVID-19入院患者の治療成績を調べ、メトホルミンの使用が死亡率に影響を与えていたかどうかを検討するコホート研究を行い、患者全体では死亡率に差は見られなかったが、メトホルミンを使用していた女性患者では死亡率が有意に低下していたと報告した。結果は2020年12月3日のLancet Healthy Longevity誌電子版に掲載された。

 肥満者や2型糖尿病患者では、内臓脂肪細胞から炎症反応や血液凝固を促進するアディポカインが分泌され、TNFαやIL-6の濃度が高くなりやすい。メトホルミンにはそれらを抑制するとともに、炎症を抑制するIL-10を増幅する作用もあり、それらの効果は男性より女性の方が強いことが知られている。炎症や凝固促進は、COVID-19が重症化する危険因子でもあるため、著者らはメトホルミンがCOVID-19関連死亡を減らせるかどうか、影響は性別で左右されるかを検討するために、後ろ向きコホート研究を実施した。

 この研究には、米国の大手医療保険会社であるUnitedHealth Group(UHG)のClinical Discovery Claims Databaseを利用させてもらい、全米50州の加入者を対象に匿名化した診療データを得た。組み入れ対象は、2020年1月1日~6月7日までにPCR検査でSARS-CoV-2陽性が確定した18歳以上のCOVID-19入院患者で、2019年に6カ月以上にわたり同社の保険に加入していて、2型糖尿病または肥満と診断されていた人とした。

 主要評価項目は院内死亡とした。データベースからは、ICU入院や人工呼吸器使用などの情報が得られなかったため、副次評価項目は設定しなかった。メトホルミン使用については、保険請求データに基づいて、COVID-19で入院する前の1年間に、90日超にわたってメトホルミンを処方されていた患者を使用者とした。共変数として、併存疾患、処方薬の使用、人口統計学的特性、居住する州などの情報も収集した。

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シリーズ◎新興感染症
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