東京地下鉄(東京メトロ)と三菱電機は、鉄道車両の走行データから故障の予兆を自動検知する「故障予兆検知システム」を開発した(図1)。故障予兆を捉えて、鉄道の安定運行と機器の交換周期の最適化を図る。2020年10月から有楽町線と副都心線を営業走行する「10000系」車両のブレーキ制御装置と電動空気圧縮機を対象に試験運用し、その後、2021年2月に有楽町線・副都心線で営業開始予定の「17000系」車両や、他の機器にも適用を拡大する計画だ。

図1:「故障予兆検知システム」の概要
図1:「故障予兆検知システム」の概要
(出所:三菱電機)
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* 東京メトロのニュースリリース:https://www.tokyometro.jp/news/images_h/metroNews201005_68.pdf
* 三菱電機のニュースリリース:https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2020/pdf/1005.pdf

 両社は、2019年2月から丸ノ内線「2000系」などで運用されている「車両情報監視・分析システム」(Train Information Monitoring and Analysis system:TIMA)の新機能として、故障予兆検知システムを搭載する。TIMAは、走行中の車両機器の動作データを無線で送り、指令所や車両基地でモニタリングできるようにするシステム。新システムは、TIMAで収集したデータを自動で分析する。

* 関連記事「三菱電機と東京地下鉄、地上と常時つながり、ビッグデータ蓄積に対応する監視・分析システム」:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03312/

 具体的には、車両制御情報管理装置(Train-control Information Management System:TIS)がブレーキ装置からブレーキ動作時の空気圧力データを、電動空気圧縮機から動作時間データと温度データを取り、高速大容量無線通信でクラウド上のデータセンターに伝送する(図2)。そのデータを基にデータ分析サーバーがいき値判定し、故障予兆を検知。原因究明のためのグラフや帳票を出力して、アラームとともに関係部署へ通知する(図3)。

図2:モニタリングの対象となる機器
図2:モニタリングの対象となる機器
(出所:東京メトロ)
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図3:故障予兆検知のイメージ
図3:故障予兆検知のイメージ
(出所:東京メトロ)
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 これにより、状態が悪化する前に早期の車両点検や部品交換が可能になる。営業走行中の各装置の状態を高い頻度で測定・分析するため、検査の精密化と効率化にもつながる。車両搭載機器から収集した動作データと、過去に発生した故障時のデータパターンや機器・部品の使用実績との照合により、機器・部品の寿命診断を支援し、最適な周期で交換できるようにする。

 両社は、「10000系」車両での試験運用の結果を踏まえて、適用範囲を拡大する計画。車両推進制御装置や電源装置、保安装置などにも適用し、定期点検(Time Based Maintenance:TBM)の効率化と状態監視による予防保全(Condition Based Maintenance:CBM)の実現を図る。