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Lancet誌から
AZ社のCOVID-19ワクチン臨床試験の中間解析
標準用量を2回接種した群よりも初回低用量群の方が有効性が高い結果に

 英国Oxford大学のMerryn Voysey氏らは、Oxford大学とAstraZeneca社が開発しているChAdOx1 nCoV-19ワクチン(AZD1222)の有効性と安全性を評価するために、英国、ブラジル、南アフリカで行われた臨床試験の中間解析結果を報告した。速報で有効性90%と報じられたこの論文は、2020年12月8日のLancet誌電子版に掲載された。

 AZD1222は、SARS-CoV-2のスパイク蛋白質の遺伝子を抗原に用いて、複製能力を欠損させたチンパンジーのアデノウイルスをベクターに利用して、体内で免疫反応を誘導するワクチンだ。2020年4月23日に英国でフェーズ1試験(COV001)が開始された。その後英国でフェーズ2/3試験(COV002)が始まり、ブラジルでもフェーズ3試験(COV003)が実施された。このほかに南アフリカでフェーズ1/2試験(COV005)が行われ、ケニアでもフェーズ1/2試験が始まっている。

 フェーズ1試験では参加者を18~55歳の健康な成人に限定していたが、フェーズ2試験からは56歳以上の成人も参加可能とし、フェーズ3試験では医療従事者や介護施設勤務者などウイルスに暴露する可能性が高い人も参加者に含めた。既に参加登録は終了し、試験は追跡段階に入っている。しかし、小児に対する臨床試験は始まっていない。

 有効性の評価は、英国とブラジルで行われたフェーズ3試験のデータを統合した。安全性の評価には南アフリカの試験データも含まれる。南アフリカの試験は二重盲検で行われており、対照群には生理食塩水が用いられている。英国とブラジルの試験は単盲検試験で、対照群にはACWY結合型髄膜炎菌ワクチンが投与された。いずれの試験も、1対1の割合でAZD1222または対照群に割り付けている。

 ワクチン群には、標準用量となる5×1010個のウイルス粒子を2回投与した(SD/SDコホート)。しかし、英国のCOV002試験では、初回にほぼ半量となる2.2×1010個のウイルス粒子を投与し、2回目のブースター投与に標準用量を用いるグループ(LD/SDコホート)を設けた。

 初回が低用量となった理由は、製造を委託した企業が用いたウイルス粒子定量法にあった。その会社はワクチンに含まれるウイルス量の測定に分光光度計を用いており、5×1010個になるように調整はしていたが、製品に対して定量的PCR(qPCR)を行ったところ、ウイルス粒子が2.2×1010個しか含まれていなかったことが判明した。そこで6月5日以降はプロトコールを修正し、ワクチン製造過程で定量にqPCRが用いられた製品で、ウイルス粒子が3.5~6.5×1010個含まれているものを接種した。COV003試験とCOV005試験にもこの用量のワクチンが用いられている。

 COV002試験のLD/SDコホートは、5月31日から6月10日までの11日間に登録された18~55歳の成人からなり、SD/SDコホートには、6月9日から7月20日までに登録された18~55歳の成人と、8月以降に登録された56~69歳および70歳以上の成人が含まれていた。

 ワクチンの接種を受けた人々には、COVID-19が疑われる症状が現れた時点で、臨床試験参加施設に連絡するよう指示した。参加施設では、診察とスワブ標本と血液標本の採取を行った。スワブ標本はRT-PCR検査を含む核酸増幅検査(NAAT)の対象となり、血液標本は免疫原性と安全性の評価に用いられた。

 有効性の主要評価項目は、2回目の接種から14日超が経過した時点の、症候性(体温が37.8度以上、咳、息切れ、嗅覚障害または味覚障害あり)のCOVID-19発症とし、NAATによりSARS-CoV-2感染を確認した。ワクチンの有効性は、年齢を補正した頑健ポアソン回帰モデルによる相対リスク値を、1から引いた値として算出した。今回の分析のデータカットオフ日は2020年11月4日とした。

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シリーズ◎新興感染症
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