宇宙ビジネスが進化している。

 電波の反射を利用する「合成開口レーダー」(SAR)。悪天候で雲がかかっていても、深夜で日が差さない場所でも地表を観測できる。技術革新で小型化が進んだSARを活用した新たな人工衛星ビジネスが世界各国で勃興しているのだ。

日本のSynspectiveが開発中のSAR衛星「StriX-α」の運用イメージ
日本のSynspectiveが開発中のSAR衛星「StriX-α」の運用イメージ
Xバンド(8~12GHz帯)の電波を使う合成開口レーダーを搭載。2022年には6機体制でサービスインを予定している。将来的には25機体制を構築して世界中の任意の地点を1日1回は観測できるようにする。(出所:Synspective)
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 SAR自体は歴史のある技術だが、かつては大型で国家プロジェクトレベルの大型衛星にしか搭載できなかった。技術革新が進んで小型化され、十分な性能のSARを小型衛星に搭載する技術も確立した。この結果、多数のSAR衛星で運用し、地球上のどこでも24時間、地表を撮像できるように鳴ってきた。

 得られたデータを解析し、そこから幅広い情報を得る技術も深層学習(ディープラーニング)などAI(人工知能)技術の進歩により、飛躍的に広がりつつある。駐車場の駐車台数から景気の動向を、田畑の映像から食料の供給量を予想するのも可能になった。

 SAR衛星ビジネスに参画し始めている日本の民間企業も既にいる。どのような企業が、どのようなビジネスを展開しようとしているのか。技術的な課題は何か。

 SAR衛星による宇宙ビジネスの最新動向を追う。

松浦 晋也(まつうら・しんや)
ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト
松浦 晋也(まつうら・しんや) 松浦 晋也(まつうら・しんや)宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶応義塾大学理工学部機械工学科卒、同大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~92年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。近著は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』(日経BP社)(写真:大槻 純一)