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 2021年3月、架設した鉄骨の一部に不具合が見つかって工事を中断していた相鉄線海老名駅改良工事の現場。施工者の東急建設は21年7月26日、基礎杭30本の先端に施工不良があったと発表した。

写真右手が基礎杭の先端不良が発覚した相鉄線海老名駅(神奈川県海老名市)。2021年8月4日撮影(写真:日経クロステック)
写真右手が基礎杭の先端不良が発覚した相鉄線海老名駅(神奈川県海老名市)。2021年8月4日撮影(写真:日経クロステック)
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 海老名駅改良工事は、混雑緩和や利便性向上などを目的に、既存駅舎をリニューアルするものだ。新駅舎の設計者はトーニチコンサルタント(東京・渋谷)で、施工者は東急建設・NB建設・関東緑地土木JV(以下、東急建設JV)。22年度の開業を目指し、15年4月に着工した。

 鉄骨の架設工事を進めていた20年7月、一部の鉄骨の高さが設計値より最大約54mmも低いことが発覚した。発注者の相模鉄道(横浜市)によると、架設工事に着手したのは20年4月。架設直後は設計値通りの高さだったが、約3カ月後の定期計測時には低くなっていたという。

相鉄線海老名駅新駅舎の完成イメージ。新駅舎は3階建てで、改札口を増設して混雑緩和を図る。駅舎内には保育施設なども整備する計画で、2022年度に開業予定だった(資料:相模鉄道)
相鉄線海老名駅新駅舎の完成イメージ。新駅舎は3階建てで、改札口を増設して混雑緩和を図る。駅舎内には保育施設なども整備する計画で、2022年度に開業予定だった(資料:相模鉄道)
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相模鉄道が2021年3月に発表した不具合箇所。架設した鉄骨のうち2カ所の高さが設計値よりも低かった。その後、東急建設が調査したところ、基礎杭の先端不良が発覚した(資料:相模鉄道の資料を基に日経クロステックが作成)
相模鉄道が2021年3月に発表した不具合箇所。架設した鉄骨のうち2カ所の高さが設計値よりも低かった。その後、東急建設が調査したところ、基礎杭の先端不良が発覚した(資料:相模鉄道の資料を基に日経クロステックが作成)
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 相模鉄道はトーニチコンサルタントと東急建設JVに対して、架設した鉄骨を解体して地盤調査と基礎杭の健全性調査を実施するように指示した。JVの代表を務める東急建設が調査した結果、施工済みの基礎杭30本全てに先端不良が見つかった。

 東急建設経営企画部は日経クロステックの取材に対して「掘削孔の根底部にたまったスライム(泥水中の土砂などの不純物)が適切に除去されていなかった。このため、杭の先端部のコンクリートがきちんと打設できず、支持力不足が生じて鉄骨が沈下してしまった」と説明する。