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アフガン市民の窮状とレシャード先生の訴え

2021/10/30

アフガニスタンに駐留していた米軍が撤退を完了し、2カ月が過ぎた。その後も自爆テロが各地で起き、タリバン政権を恐れる人たちは国を脱出し、あるいは身を隠し、人口の半分が十分な食事をとれない深刻な危機に瀕している。

 米国のバイデン大統領は、撤退完了の演説で、「米国に対するテロの脅威を取り除く」という駐留目的は10年前に達成されたとし、こう述べた。「アフガニスタンで駐留を続けても米国の安全や治安が高められるとは思えない」(2021年9月1日、NHKのウェブサイトによる)。

 駐留と自国の安全、治安の維持を結びつけ、さらにこう言った。「ほかの国の再建のために米国が大規模な軍事作戦を行う時代は終わった」。そこにはかつて「世界の警察」と呼ばれた大国の面影は見られない。

 2001年9月11日の米国同時多発テロ事件の発生直後、米国は容疑者のウサマ・ビンラディンの身柄引き渡しを当時のタリバン政権に要求したが、応じられなかった。米国は「テロとの戦い」を掲げ、「不朽の自由作戦」という統一作戦名でアフガニスタンへの空爆を開始する。

 2011年5月、米軍はパキスタンでウサマ・ビンラディン容疑者を殺害し、作戦の主目的を達成した。区切りをつける機会が到来したが、現地の治安悪化を理由に米軍は駐留し続ける。米国民の「テロとの戦い」への熱狂は冷め、関心が薄れても米軍はアフガニスタンにとどまった。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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