全1701文字

 清水建設は2021年7月29日、東京都港区で施工を手掛けている「虎ノ門・麻布台地区第1種市街地再開発事業(虎ノ門・麻布台プロジェクト)A街区新築工事」で、同社が掲げる建築工事現場のデジタル化コンセプト「Shimz Smart Site(清水スマートサイト)」を実践し始めたことを明らかにした。最先端のデジタル技術とリアルなものづくりの知恵を融合し、大規模な施工現場の建設DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。

建築工事現場のデジタル化コンセプト「Shimz Smart Site」の概念図(資料:清水建設)
建築工事現場のデジタル化コンセプト「Shimz Smart Site」の概念図(資料:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 その一環として、現場には施工管理のデジタル化を推進するための新端末「SmartStation」の配備を進める。同時に、統合監視室「Smart Control Center(スマートコントロールセンター)」で、現場から集まる情報や映像を集中監視する。

「SmartStation」の利用場面(写真:清水建設)
「SmartStation」の利用場面(写真:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]
大型ディスプレーが並ぶ統合監視室「Smart Control Center」(写真:清水建設)
大型ディスプレーが並ぶ統合監視室「Smart Control Center」(写真:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 A街区に新築する複合棟は、地下5階・地上64階建ての超高層ビルである。延べ面積は約46万m2と巨大だ。使用する物量が多いだけでなく、曲線が多いデザインを採用しており、施工の難易度が非常に高いという。そうした中、現場の生産性向上も進めなければならない。

 そこで新たに開発したSmartStationで、施工管理を効率化する。複合棟全体で、SmartStationを127台配備する。

 SmartStationは分電盤の機能を併せ持つ。2つのタイプがあり、1つはベースタイプの「スマート分電盤」、もう1つはタッチパネル型のディスプレーを搭載した多機能タイプの「スマートステーション」である。後者のスマートステーションは、5フロアごとに1台設置する。

ベースタイプの「スマート分電盤」(写真:清水建設)
ベースタイプの「スマート分電盤」(写真:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]
多機能な「スマートステーション」(写真:清水建設)
多機能な「スマートステーション」(写真:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 2つのタイプに共通する機能は、360度カメラによる監視やWi-Fi通信、遠隔からのブレーカー操作と使用電力量の監視、トリップ(異常)監視などである。加えてスマートステーションは、Web会議や工程表などの帳票および図面の閲覧、分散朝礼のガイド、当日の現場作業の確認、資材の搬入や揚重状況などの確認ができる。

 施工管理者や現場担当者はスマートステーションの画面を見れば、必要なときに必要な相手とコミュニケーションが取りやすくなる。個別に端末を持ち歩かなくても、施工に必要な情報は一通りそろう。

 建物全体をカバーできるというWi-Fi機能は、超高層エリアでの自動搬送ロボットの自律運行や、写真や動画の高精細・低遅延の送受信を可能にするものだ。

 A街区におけるデジタル化の取り組みは、同社の中期デジタル戦略2020「Shimz デジタルゼネコン」で示した3本柱の1つ「ものづくりをデジタルで」を現場で実現するための指針であるShimz Smart Siteに基づくものである。