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 大手セメントメーカー3社がセメント製品の価格を引き上げる。太平洋セメントと宇部三菱セメント(東京・千代田)は2022年1月1日出荷分から、住友大阪セメント は22年2月1日から値上げに踏み切ると発表した。3社は製造コストや物流コストの上昇などを価格改定の理由に挙げている。

太平洋セメントの熊谷工場(写真:太平洋セメント)
太平洋セメントの熊谷工場(写真:太平洋セメント)
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 太平洋セメントは22年1月1日出荷分から、ホワイトセメントを除く各種セメント製品とセメント系固化材を1トン当たり2000円値上げする。宇部三菱セメントも同日出荷分から、全セメント製品とセメント系固化材の価格を1トン当たり2200円以上、引き上げる。住友大阪セメントは22年2月1日から、全セメント製品とセメント系固化材を1トン当たり2400円値上げする。

 価格引き上げの主な理由は、中国での需給逼迫などに伴う石炭価格の高騰だ。セメントの製造工程では、石灰石や粘土などの原料を調合し、石炭を燃料に1450度超の高温で焼成してクリンカーと呼ばれる塊をつくる。石炭を燃焼してできる石炭灰は、粘土の代替原料としても使用される。このように、石炭価格の上昇は、セメントの製造コスト増に直結する。

 中国政府が石炭増産に舵(かじ)を切るなどして過度な需給逼迫が和らいだことなどを受け、石炭価格は急反落したが、依然として高値であることに変わりはない。

 重油価格の高騰に伴う物流コストの上昇も理由だ。3社は企業努力だけでは製造コストや物流コストの上昇分を吸収するのは困難だとして、価格改定に踏み切った。

 セメント製造設備にかかる費用の増加も理由の1つだ。背景には、設備の老朽化や人件費の高騰などで維持・修繕や更新のコストが増加していることのほか、脱炭素に向けて大規模な設備投資の必要性が高まっていることなどがある。