世界3カ所に拠点を置くOMAで、米ニューヨーク事務所を率いる。日本でもプロジェクトを手掛け、社会の変化を観察しているという。その眼力で新しい建築や都市のタイプを捉え、挑んでいく──。
しげまつ しょうへい 48歳
1973年生まれ。96年九州大学工学部建築学科卒業。98年OMA入所。2006年OMAニューヨーク事務所設立、08年OMAパートナー。21年から九州大学大学院人間環境学研究院教授、BeCAT(Built Environment Center with Art & Technology)センター長。主なプロジェクトは、天神ビジネスセンター(デザインアーキテクト、21年)、オードリー・イルマズ・パビリオン(21年)、虎ノ門ヒルズステーションタワー(外観デザイン、23年予定)
米ニューヨークのマンハッタンでSANAAなどが設計した「ニュー・ミュージアム本館」の隣に2023年、新館が完成予定だ。設計は、OMA(オランダ・ロッテルダム)のニューヨーク事務所(以下、OMA NY)。その代表を務めるのが重松象平氏だ。レム・コールハース氏と並ぶOMAのパートナーの1人である。
重松氏は、「OMA NYが意識しているのは多様性。様々な建物タイプやスケール、都市に関わることで社会の変化を観察している。それによって見えてくる新しい建築や都市のタイプに挑みたい」と話す〔図1〕。
重松氏の言う新しい建物タイプとして、例えば美術館が挙げられる。米国では近年、教育やイベントなどのコミュニティーエンゲージメントに関わる場が求められ、単にアートを鑑賞する場から、公共性の高い場へと変わっている。ニュー・ミュージアム新館では、開口部が少ない本館に対して、前面の目抜き通りに面してアトリウムを設けるとともに、建物の下部を後退させ、都市の活動を内部に引き込む計画とした。
米シカゴでも新しい建物タイプに挑む。25年に完成予定のイノベーションセンター「ディスカバリー・パートナーズ・インスティテュート(以下、DPI)」だ。
これまで安全への配慮から郊外に設置されていた、装置や薬品などを扱う実験室が、技術の発展によって都市部で計画できるようになってきた。こうした背景から、米国ではオフィスと実験所を組み合わせて新規産業の創出を狙う貸しオフィスの新しい建物タイプが生まれている。
DPIではオフィスと実験所の共創を促すため、人と人の出会いが多くなるよう、シミュレーションを活用してプランニングをしている。