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 2021年の建築界における10大ニュースを、日経クロステック/日経アーキテクチュアが報じたニュースと共に振り返る。ここでは日経アーキテクチュアが選んだ3位から1位までを見ていこう。

3位:「脱炭素」を目指し省エネ規制を強化へ、木造も太陽光も動員

大林組が横浜市で建設している木造高層ビルの建設現場。近年、住宅だけでなく非住宅建築物でも木材の利用が加速している(写真:大林組)
大林組が横浜市で建設している木造高層ビルの建設現場。近年、住宅だけでなく非住宅建築物でも木材の利用が加速している(写真:大林組)
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 2021年は建築物の脱炭素を巡る議論が加速した1年だった。20年10月の臨時国会で当時の菅義偉首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を打ち出したのがきっかけだ。さらに菅前首相は21年4月22日、温暖化ガスの排出量を30年度に13年度比で46%削減することを目指すと表明した。

 カーボンニュートラルの達成に向けて、国土交通省と経済産業省、環境省の3省は21年8月23日、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」を発表。30年の目指すべき姿を「新築される住宅・建築物についてZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準の水準の省エネ性能が確保され、新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が導入されていること」とした。

 目標達成に向けた具体的な工程表も示した。新築住宅については、建築物省エネ法に基づく省エネ基準への適合を25年度に義務化することが決まった。

 政府は、建築物への木材の利用も脱炭素に向けた取り組みの1つに位置付けている。公共建築物だけでなく、民間建築物についても木造化・木質化を促す改正公共建築物木材利用促進法が10月1日に施行された。林野庁は同日、「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」を公表。木造建築物の所有者などが、使用した木材の炭素貯蔵量を発信できるよう、標準的な計算・表示方法を示した。

 法改正によって、木造ビルの建設に挑む企業がますます増えそうだ。