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 LIXILとグループ会社の一部は、東京・江東のWINGビルから東京・品川の住友不動産大崎ガーデンタワーへ本社を移転する。コロナ禍でテレワークが浸透したことが理由だ。移転によって本社面積を9割減らし、運用費の削減や資本効率の向上を図る。2021年12月6日に発表した。

 移転は22年8月を予定している。計4棟から成るWINGビルでの業務は、1棟を除いて23年3月までに終了する。発表後、23年3月の引き渡しを目指して土地と建物の売却手続きを始めた。21年12月中旬時点で売却先は決まっていない。

WINGビルの外観。「LIXIL」の看板を掲げた手前の建物がKAZE棟、その右奥に立つ白い建物がHIKARI棟。中央奥の建物がHOSHI棟(写真:LIXIL)
WINGビルの外観。「LIXIL」の看板を掲げた手前の建物がKAZE棟、その右奥に立つ白い建物がHIKARI棟。中央奥の建物がHOSHI棟(写真:LIXIL)
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 移転先の住友不動産大崎ガーデンタワーでは、2フロアで計約6600m2を借りる。WINGビルの延べ面積の約11%だ。オフィス面積を約9割減らすという大胆な見直しを決めた背景には、出社率の低下がある。

 WINGビルを職場とする従業員はグループ会社を含めて約8000人いるが、21年11月時点で出社率は10~15%程度だった。LIXILは「コロナ禍で従業員は在宅勤務が基本となり、それぞれのライフスタイルに合わせた自律的な働き方へ転換した。元の働き方に戻ることはない」とし、新しいオフィスを、「従業員が執務に当たる場所ではなく、コミュニケーションとコラボレーションをする場所」と位置付ける。

 同社が本社機能の集約を目的として東京・千代田の霞が関ビルディングからWINGビルに本社を移転したのは19年11月のことだ。それに伴いWINGビルで4棟目となるHOSHI棟を同年10月に新築。既存のKAZE棟、HIKARI棟の改修を20年3月末に完了したばかりだった。同社広報部は本社の移転について、「我々も驚いている。本社移転やオフィス面積の縮小によって生じる検討事項については、これから整理していく」とする。

 新築したHOSHI棟には、同社の先端技術をふんだんに盛り込んでいた。ファサードには複層ガラスをカーテンウオールユニットにじかに接着する「ダイレクトボンディング型4辺SSG構法」を国内で初めて採用。リアルタイムで快適指数を解析し、空調と窓の開閉を自動制御する「ハイブリッド環境制御システム」と組み合わせて、高い省エネ性能を実現した。このビルは同社の技術力を対外的に示す場になっていた。

 1階には永山祐子建築設計(東京・新宿)が手掛けた「オルタナティブ・トイレ」を設置している。LIXILが永山祐子氏とともに、性別不問のトイレについて考察・検討を重ねた末に生まれたものとしてアピールしていた。

HOSHI棟のファサード(写真:LIXIL)
HOSHI棟のファサード(写真:LIXIL)
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 HOSHI棟にはR&Dセンター「HUB LAB(ハブラボ)」も設けている。従業員が社外の専門家とアイデアを共有して製品の試作や評価・検証をしたり、所属部署にかかわらず誰でも開発中の製品を試せるようにしたりして、研究開発を加速するのが目的だった。移転先にHUB LABを設置するかどうかは決まっていない。

 HOSHI棟の竣工式でLIXILの瀬戸欣哉社長は、「お客様やエンドユーザーがまだ気付いていない課題への解決策を提供するべく、より迅速にイノベーションを起こす場所になると期待している」とコメントしていた。それからわずか2年で売却を決めたことになる。