「スマートくら寿司」と名付けた取り組みで最新のITシステムや機械化で回転すしの店舗を進化させているくら寿司。創業者で社長の田中邦彦氏に、新たなテクノロジーを積極的に導入する狙いや今後の展開を聞いた。
(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、松浦 龍夫=日経クロステック/日経コンピュータ)
2021年10月期は中間決算の売上高が過去最高になるなど業績が回復しつつあります。要因をどう分析しますか。
いくつかの要因がありました。2020年から行われた政府の「Go To Eatキャンペーン事業」で当社での利用が「無限くら寿司」と呼ばれて注目を集めたことや、人気アニメ「鬼滅の刃」とのコラボレーションでたくさんの顧客が店に足を運んでくれたことなどです。
無限くら寿司は当社が想定したものではないですし、宣伝したわけでもありません。ただ、スマートフォンなどでの事前座席予約システムを導入できていたことが奏功して、顧客をしっかり受け入れられたという面はあります。
コロナ対策にテクノロジーを活用
これらに加えて、やはりターニングポイントになったと最近肌で感じるのは、抗菌寿司カバー「鮮度くん」などテクノロジーを生かした店内での新型コロナウイルス対策が支持されたことです。米国店舗における営業再開の許可が早めに出たのも、コロナへの対策が整っていたためでした。
「スマートくら寿司」と呼ぶ取り組みですね。
そうです。ITシステムや機器を積極的に導入し、入店時の受け付けから席案内、注文時、精算時まで人とやり取りせず、機器にも触れることなく食事を楽しめるようにしました。
例えば入店時の無人機で受け付けをした後は、店内のデジタルサイネージで顧客を座席に案内します。料理を注文する際は備え付けのタッチパネルだけでなく、顧客が自身のスマホから直接注文もできます。「スマートくらプロジェクト」として、これらの仕組みをくら寿司の各店舗に導入しているところです。
当初は2020年から向こう5年間での全店導入を計画していましたが、「三密を避けられる仕組みはあるのか」など、想定以上に顧客からの問い合わせが多い。導入時期の前倒しを決めまして、2021年の年末までには全店導入できるように計画しています。