全1950文字

 国内大手ITベンダーがこのほど発表した2021年4~12月期の決算で、半導体不足の問題が一段と拡大している実態が分かった。各社とも対策を講じているが、部品調達の遅延やコスト増などの影響を吸収しきれていない。足元ではNECや富士通が法人向けサーバーの一部を値上げした。新型コロナウイルス禍や米中のデカップリング(分断)に伴うサプライチェーン(供給網)の混乱は長期戦の様相を呈している。

 「正直に言って、(半導体など)部材供給遅延の影響が(想定していた)リスク以上に出てきている。特にコストアップの影響が非常に強く、なかなか内部で吸収しきれない」。2022年1月27日に富士通が開いた決算説明会で、CFO(最高財務責任者)を務める磯部武司執行役員専務はこう語った。

 富士通によると、半導体不足に起因する部材の供給遅延の影響は、2021年4月~12月の9カ月累計の減収額が397億円、営業損益へのマイナス影響は190億円だった。第3四半期(2021年9~12月)単体でみると、部材の供給遅延による減収額は248億円、営業損益へのマイナス影響は119億円に達した。半導体の調達価格の高騰や物流コストの上昇などが響き、とりわけ主力事業であるITサービスなどの「テクノロジーソリューション」セグメントの業績を押し下げた。

 NECの森田隆之社長兼CEO(最高経営責任者)も2022年1月31日に発表した2022年3月期決算で、半導体をはじめとする部材不足の影響額が2021年4~12月の営業損益ベースでマイナス70億円と説明した。通期ではマイナス80億円になると予想する。

2022年3月期第3四半期の決算説明会で半導体不足の影響について話すNECの森田隆之社長兼CEO(最高経営責任者)
2022年3月期第3四半期の決算説明会で半導体不足の影響について話すNECの森田隆之社長兼CEO(最高経営責任者)
(NECの配信映像を日経クロステックがキャプチャー)
[画像のクリックで拡大表示]

 もちろん両社とも手をこまぬいているわけではない。部品の調達ルートの拡大や代替部品への切り替え、設計変更、半導体メーカーからの安定供給を目的とした長期契約など様々な手を打っている。一連の施策により売り上げや利益の目減りを補った結果として、今回の影響額にとどめている状況だ。

 さらに製品価格の値上げも始めている。例えばNECは2021年12月上旬受注分から、サーバーの一部モデルについて10%程度値上げした。半導体不足に加えて原油価格の高騰や円安などの影響を反映した。富士通も2022年2月3日受注分から一部のサーバーの価格を約10%値上げした。