「問題解決の科学シリーズ」は今回で12話目となった。1話から11話を通じて「こうすればこういう具合に失敗した(あるいはうまくいった)」という私の失敗体験と、問題を構成する要素の1~4をひも付けて、「問題解決」について探究してきた。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

問題を構成する5つの要素

  1. 意思決定者(decision maker)
  2. 制御可能変数(controllable variables)
  3. 制御不能変数(uncontrollable variables)
  4. 制約条件(constraints)
  5. 結果(outcome)

 この1~5の要素の関係をひと言で表現するとこうなる。

『問題解決は、私たち「1.意思決定者」が、ある「4.制約条件」の下で、私たちの力が及ばない「3.制御不能変数」によって「2.制御可能変数」や「5.結果」が影響を受ける前提で、「2.制御可能変数」の最適な値を選択することによって因果関係を持つ「5.結果」を導くことである』

 ちょっと長いが、文章の上で5つの要素が全てつながっているはずだ。今回は、最後の要素である「5.結果」について、私の失敗体験を基に、原因と結果の「因果関係」から問題を解決することを検証していきたい。

これからは宣伝広告費をゼロにする

 「新規顧客獲得の活動をゼロにして、コストもかけない。なるほど。じゃあ、飯室さん。それで売り上げ落ちたら、責任取ってくれますね?」――。

 東日本を担当する営業マネージャーたちが、憤懣(ふんまん)やるかたない様子で詰め寄ってきた。営業部門からマーケティング部門に異動した直後の私が、古巣の営業会議に乗り込んで、今後の方針を話したときのことだ。

 会議で私は、こんな発表をした。「新規顧客獲得のための営業・マーケティング活動は、コストも時間も労力もかかる上に成果が出にくい。そこで一切の活動、つまりキャンペーンやイベント、宣伝、広告、学会展示を中止し、コストをゼロにする。これからは全てのリソースやコスト、時間を既存顧客の攻略に投入して、『生涯顧客戦略』を進めてほしい」。

 営業マネージャーたちが怒ったのも無理はない。営業部門を統括していたときの私は、営業マネージャーたちに「新規顧客開拓が君たちの仕事だ。既存顧客に会ったところで、大型装置は10年に1度しか売れないんだから、新規を探して売り上げを立てろ」とゲキを飛ばしていた。

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