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 九州大学の建築研究教育センター「BeCAT(ビーキャット)」による、初の社会実装プロジェクト「糸島の環境住宅」。「九州の気候を活かしたZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」をテーマとし、BeCATセンター長の重松象平氏と副センター長の末廣香織氏、デザインラボ長の末光弘和氏をはじめとする教員の指導のもと、大学院生が設計した住宅を、JR九州住宅(福岡市)が建設した。2022年10月1日に開催された完成見学会で、その実物を見てきた。

販売を前提に実施設計や積算まで行う実習

 この住宅は、JR九州住宅が実際に販売することを前提に計画された。学生たちは敷地のリサーチから始め、JR九州住宅が設定した予算・家族構成を踏まえて設計案を練ったそうだ。BeCATデザインラボ長の末光弘和氏は「実際に建てて売るという課題は、教員にとってもプレッシャーがあった」と振り返る。14週間掛けて積算を重ね、詳細を詰めた実施設計はいずれも精度が高く、「大学でこれほど熱気のある実習は、今までに見たことがないほどだ」と末光氏は語る。

 18人の学生が4グループに分かれて作成した設計案は、学外からも意見を聞くためオンラインによる一般投票を経て、最終講評が行われた。採用案は、ほぼ満場一致で決定したという。

南側外観。設計を手掛けた九州大学大学院人間環境学府修士2年の石本大歩氏(左)と樋口紗矢氏(写真:萩原詩子)
南側外観。設計を手掛けた九州大学大学院人間環境学府修士2年の石本大歩氏(左)と樋口紗矢氏(写真:萩原詩子)
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