国内有数の大規模複合施設へ、子どもたちが元気に登校している――。東京都中央区八重洲にある「中央区立城東小学校」が9月に移転開校した。JR東京駅前の「東京ミッドタウン八重洲」にビルトインした学校だ。現地を訪れると、都心部の小学校としては欠かせない、音や視線などへの配慮や、子どもたちの安全対策が盛り込まれていた。
東京ミッドタウン八重洲は、三井不動産が八重洲二丁目北地区市街地再開発組合の一員として開発を推進している市街地再開発事業の1つ。高さ約240mの超高層ビルで、延べ面積は約28万3900m2。地下にバスターミナルや店舗、地上の低層部に小学校や店舗、中層部にオフィス、高層部にホテルなどの機能が入る複合施設だ。基本設計・実施設計・監理を日本設計、実施設計・施工を竹中工務店が担当した。
城東小学校は、東京ミッドタウン八重洲の低層、南東部分に位置する。延べ面積は約7690m2で、地上4層に入っている。搬入動線や機械室は地階にある。普通教室は3~4階で、体育館は2階。その他に多目的室や特別教室、屋内プール、開閉式屋根を備えた全天候型の屋上校庭などが入る。開校時の児童数は約170人で各学年は1クラス。28年度には2クラスずつに増える見込みだ。
建物が密集する都心部の小学校を設計するには、騒音をできるだけ周囲に出さないことが大きな課題になる。特に城東小学校の場合は、同じビルの中にオフィスやホテルなど、静穏性が必要な施設が入っている。また、すぐそばの隣地にも既存ホテルが立っていたため、そこへの配慮も必要だった。
設計を担当した日本設計第2建築設計群長の神林徹執行役員は「ブラスバンドや太鼓の演奏をしたいという小学校からの要望と、体育館や屋上校庭に隣接するオフィスロビーへの音漏れ対策を両立するために検討を重ねた」と語る。
小学校で大きな音が出る場所は、主に校庭や体育館、音楽室、プールだ。特に、運動会などを行う校庭には、発注者である東京都中央区も音の懸念を示した。そこで設計者は、中央区内の他の小学校で運動会の音を実測し、騒音値をシミュレーションして対策案を検討した。
周辺への音の影響を抑えるため、屋上校庭には開閉式の屋根を架けた。建物の高層部に近接する西側から屋根が開くようにしている。東京ミッドタウン八重洲に入るホテルなどは、日中に子どもたちが活動する小学校と利用時間が異なるため音による大きな影響は出ないと想定した。もしも開業後に音が問題になったときは、屋根を閉めて運用することも検討していく。
また、体育館では床と壁を二重構造にして防音対策を施した。音楽室も、隣地に立つ既存のホテルに音の影響が出ないよう、床と壁、天井を二重化した。建具も二重にし、外部に面する開口部には防音ルーバーを設置。一般的な小学校の仕様をはるかに超えた防音対策を施した。