経済協力開発機構(OECD)は2020年9月8日、加盟各国の教育状況を定量的で国際比較が可能な教育データとして毎年公表する「『図表でみる教育』(Education at a Glance)」の2020年版を発行した。また、今年に関しては付録データとして、新型コロナウイルスの感染拡大が世界各国の教育にどのような影響を与えたかを分析した「『新型コロナウイルスの教育への影響』The Impact of COVID-19 on Education」も同時に発行した。
OECDは「新型コロナウイルスの感染拡大が教育に及ぼす影響の全貌はまだ明らかになっていないが、各国政府は経済の停滞、税収の減少、医療費と社会保障費の増大により公的資金の配分を巡って難しい決断を迫られることになる」としている。2017年には、初等教育から高等教育に対する公的支出総額は、OECD諸国平均で政府総支出の10.8%を占めており、その割合が最も低かったギリシャで6.6%、最も高かったのはチリで17.4%、日本は7.8%だった。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリでの会見で「教育制度の強化は、危機回復計画の中心に据えるべきだ。この危機が教育の不平等を拡大させないように、できる限りの取り組みをしなければならない」と述べている。
国内総生産(GDP)に占める教育に関する公財政支出(2017年)は、初等教育から高等教育まででOECD平均は4.9%で、最も比率の高いノルウェーは6.7%に対して、日本は4.0%と低い。
一方で、日本は少子化が進んでいるため、人口全体に占める在学者の割合が低く、総人口に占める在学者数はOECD平均の23.5%に対して、日本は16.3%と7割程度にとどまる(財務省:2019年11月1日「文教・科学技術(参考資料)」)。公財政支出と家計支出を合わせた児童・生徒・学生1人当たりの年間教育支出は、OECD平均の1万1231ドル(米ドル換算)に対して、日本は1万1896ドルで遜色ない水準(2017年)。
日本は家計からの教育支出が3409ドルと多く、米国(5814ドル)、英国(4665ドル)、オーストラリア(4505ドル)に次いで4番目になり、教育に対する家計負担が重いことが分かる。ただし、日本は2020年4月から私立高校授業料実質無償化(高等学校等就学支援金制度)と、大学など高等教育の無償化(授業料等減免制度)が始まっており、対象となる家計の負担は大幅に下がっている。