1951年、ブラジル南部の町ドン・ペドリトに2人の男がやって来た。目的は、草原地帯パンパの地質図を作成すること。2人の研究者はそこで、2億6000万年前に存在した湿地生態系の痕跡がちりばめられた岩山を発見した。
ほとんどの陸塊がまだ超大陸パンゲアを形成していたペルム紀(2億9900万~2億5100万年前)、現在のブラジルに相当する辺りはトクサ類やシダ類などの維管束植物に覆われ、近くの水域にはさまざまな水生生物が暮らしていた。地球上の生物に大打撃を与え、恐竜が台頭するきっかけとなった大量絶滅の直前に存在した生態系であり、古生物学的に重要な発見だった。(参考記事:「テキサス州と南極大陸は地続きだった?」)
しかし、2人は、約180ヘクタールの土地の一角を成す約1.2ヘクタールの岩山の正確な位置について記述を残さなかった。そのため、数十年後、2人が通った未舗装路が高速道路に変わったとき、この場所は科学界から失われてしまった。
今までは。ブラジルの考古学者たちは2022年5月、ついにドン・ペドリトの遺跡を再発見したという論文を発表した。発掘調査を担当する研究者によれば、これまでに少なくとも6〜7種の植物、1種の軟体動物、2種の魚が確認されている。専門家の間ではすでに知られている種もあるが、新種が含まれている可能性もある。
「私たちは何百もの化石を集めました」と、ブラジルにあるパンパ連邦大学の古生物学者であるフェリペ・ピニェイロ氏は話す。ピニュイロ氏は、論文の共著者の1人だ。「本当に素晴らしい発見で、私はこのような場所を見たことがありません。あまりに多くの化石が埋もれており、全部集めるのは無理かもしれません。すでに見つかっている化石を研究するだけで、何十年もかかります」
子どもの好奇心が発見につながる
この素晴らしい遺跡が日の目を見るきっかけとなったのは、70年以上前に家族の土地から発掘された遺物についてもっと知りたいという子どものころの好奇心を失わなかったセレスティーノ・グラート氏の存在だ。
グラート氏は少年時代、祖父の暖炉の上に置かれていた石に心を奪われた。その表面には魚が埋め込まれていた。年齢を重ね、それが魚の化石であることを理解するようになった。
好奇心旺盛な子どもだったグラート氏は、その化石がブラジルのリオ・グランデ・ド・スル州ドン・ペドリトの郊外にある自宅の裏庭で発掘されたと知った。10歳になると、自宅の敷地内のなだらかな丘を母親と歩きながら、この魅力的な石をもっと見つけたいと考えるようになった。
化石を探してみると、見つけるのは難しくなかった。干ばつの後、雨が堆積物を洗い流し、化石が露出していたからだ。現在55歳のグラート氏は「まるで地面から生えてきたようでした」と振り返る。
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