2021年11月2日午前5時50分ごろに東京・吉祥寺で起こった道路の陥没事故。道路を管理する武蔵野市が取りまとめた調査書からは、建て替えなどで既存ビルの地下外壁を山留めとして利用する際の課題が浮かび上がる。
建設現場の山留めに利用した既存地下外壁が傾倒し、道路下の土砂が流出して陥没に至った──。
JR吉祥寺駅に程近い道路で、長さ約15m、幅約3m、深さ約2~5mに達する陥没が発生し、走行中のごみ収集車の後部が転落した事故から約11カ月〔写真1、2〕。東京都武蔵野市は2022年9月29日に公表した調査書で、道路の西側に隣接するビル建設現場の山留めが不十分だったため、陥没が生じたと結論付けた。
調査書によると、現場にはもともと地下2階・地上4階建ての建築物が立っていた。南側は1982年に建設され、95年に北側を増築している。南側の基礎形式は直接基礎、北側は杭基礎だ〔図1〕。
施工者の丸二(東京都武蔵野市)はビルの新築に向けて、既存建物の地上部分と地下躯体(柱や梁)、基礎底盤、杭を解体。唯一、既存地下外壁を温存し、山留めとして利用していた。市が調査書のなかで問題視したのは、高さ10.5mもの既存地下外壁に作用する土圧を抑えるための仮設が、不十分だったとみられる点だ。