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JAMA Network Open誌から
PTSDとうつ病がある女性は総死亡率が高い
Nurses' Health Study IIの参加者を9年追跡したコホート研究

 米国Harvard大学のAndrea L. Roberts氏らは、Nurses' Health Study II(NHS2)のデータを利用して、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が一般女性の死亡率に及ぼす影響を、うつ病がある場合とない場合に分けて検討し、高度のPTSD症状とうつ病が併存している女性では、どちらもあてはまらない女性に比べ総死亡率が4倍近くに上ったと報告した。結果は2020年12月4日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 PTSDは、高血圧や心血管疾患など様々な疾患のリスクに関連し、内分泌系などにも影響を及ぼすことから、総死亡率を増加させることが報告されている。しかし、死亡率との関連を調べた研究は、大半が戦場などで強いリスクにさらされる男性の兵役経験者を対象にしたもので、一般市民を長期間追跡した研究は少ない。また、米国でPTSDの有病率を調べた研究では、女性の方が男性の2倍以上(9.7%と3.6%)かかりやすいことが示唆されているが、一般女性におけるPTSDと総死亡率の関係は十分に検討されていなかった。さらに、PTSDにはうつ病が併存する場合が多いが、うつ病も男性より女性に多く見られる上に、うつ病も死亡リスクの上昇に関係することが知られている。そこで著者らは、一般女性を対象に、PTSDと総死亡率の関係を、うつ病の有無も考慮した上で検討することにした。

 この研究ではNHS2コホートを利用した。NHS2は経口避妊薬の普及が女性の健康(乳癌など)に与える影響を調べるために計画され、1989年に年齢が25~42歳だった11万6430人の女性の看護師をコホートに組み入れている。2年ごとに質問票を用いて参加者の健康状態をチェックし、4年ごとに食品摂取頻度調査も行っている。2008年に行われた調査でPTSDに関する質問票が追加されたため、これに回答した5万4687人を2017年まで追跡して死亡率を調べることにした。

 PTSDの診断には、米国精神医学会のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders第4版(DSM-IV)を適用し、DSM-IV PTSDのShort Screening Scaleに用いられている7症状のいくつが該当するかに基づいて、5段階(そもそもトラウマ経験なし、経験はあるが該当する症状なし、1~3個の潜在的PTSD、4~5個の中等度PTSD、6~7個の高度PTSD)に分類した。抑うつ症状は、2008年にCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale-10(CESD-10)を用いて評価した。こちらはスコア10以上をうつ病疑い、10未満を疑いなしの2群に分けた。

 主要評価項目は、2017年12月までの総死亡に設定した。米国の死亡登録であるNational Death Indexや、癌登録、家族への聞き取り調査などで死因を調べることとした。共変数として、2008年時点のBMI、喫煙習慣、運動習慣、婚姻の状態に関する情報も調べた。

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