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コロナ禍で注視される医療従事者の「専門家自治」

2021/04/30

 日本の新型コロナウイルス感染症による死亡者数が1万人を超えた。地理的、生物学的環境が近い東アジア・オセアニア諸国の中で、日本の死亡者数は突出して多い。各国のコロナによる死亡者数を並べてみると、中国4636人、韓国1813人、台湾12人、香港209人、ベトナム35人、豪州910人、ニュージーランド26人(ロイター「COVID-19 TRACKER」2021年4月26日による)。人口の違いを勘案しても、日本の数字の多さは目立つ。近隣で日本よりも多いのはフィリピンとインドネシアぐらいだ。

 昨年末から今年初めにかけてのコロナ「第3波」で、東京都では感染者が激増。発症しながら入院先が見つからず、自宅待機を強いられ、容体を悪化させて亡くなる人が相次いだ。「第4波」の到来で大阪府でも同じような悲劇が起きている。世界に冠たる国民皆保険の国の実態である。保険証1枚あれば、いつでも、どこでも、誰でも、医療機関にかかれるはずではなかったのか。

 医療提供体制が追いつかない背景には様々な要因があろうが、根本で何かが歪んでいるような気がする。

 そんな思いを抱えつつ、先日、法学者で九州大学の内田博文名誉教授のオンライン講義に参加し、目からうろこが落ちた。日本で「患者の権利」が法的に担保されていない事情を解説してくれたのだ。

 まず、「法の役割」とは「国民の権利と利益を保障すること」。そして「国家による国民の管理・統制を根拠づけることは法の役割に矛盾している」と内田氏は述べ、患者の権利に踏み込んだ。医学生時代、こういう医事法学の講義を受けていたなら、もっと身を入れて聴いたことだろうに、と思う。

 以下、私なりの解釈を記してみたい。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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