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目指せ! 看護師副院長
非常時の今、改めて思う看護師の存在の大きさ

2020/05/29

新型コロナウイルス感染症COVID-19)の拡大に対する緊急事態宣言が、全国47都道府県で解除された。各医療機関で第2波への備えを進めていることと思うが、このような「非常時」が続く中、改めて看護師の存在の大きさを感じる。病院職員の6割から7割を看護師が占めている、その事実の重さだ。

 看護師たちは、軍隊並みの秩序で院内感染を防御しつつ、個々の患者さんには細やかな心遣いを持ってケアを提供するという、「硬」と「軟」、両面の資質と技量を兼ね備えている。そして、そのことでどれだけ私たち医師が助けられていることか……。看護師の役割の大きさを理解していても、「平時」には、そのことに思いが至らないこともあるのではないだろうか。

 そんなことを思いながら、先日、全国病院事業管理者等協議会の会長を務めておられた故・武(たけ)弘道先生が編著者を務めた『目指せ! 看護師副院長』(日総研)を、久しぶりに書庫から出して開いた。今から12年前に出た本だが、看護師の最高職位を看護部長止まりでなく、副院長に上げることで、どれだけその病院が生き生きと活性化され、みなが働きやすく、患者さんから、そして地域からも評価が高まるか、再認識した。

 1937年生まれの武先生は、九州大学医学部を卒業後、2度のアメリカ留学を経て、病院勤務医として鹿児島市立病院に勤めた。同院の事業管理者兼病院長を務め、その経営手腕を見込まれて埼玉県庁にスカウトされる。病院事業管理者として埼玉県立4病院の質向上と経営改善に尽力された。

 その武先生が、こう言い切る。

「病む人の一番近くで働き、沢山の患者さんに優しい目で接して、いくつもの科を回りながら、『病院を見る目』を養ってきた看護師の中から、副院長を一人置くことによって、病院の実態が経営に反映されて『より良い病院になる』というのが、生涯勤務医として働いてきた私の確信である」(p.16)

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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