厚生労働省は2020年5月13日、みらかホールディングス子会社の富士レビオが承認申請していた新型コロナウイルスの抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV-2」を承認し、同日の中央社会保険医療協議会(中医協)で保険適用の検査費を6000円に定めた。行政検査となる場合は全額公費負担となる。まずは患者発生数の多い都道府県で帰国者・接触者外来を持つ医療機関や特定機能病院から供給が開始される見込み。

陽性ならほぼ確定だが、陰性は精度低くPCRが必要

 同キットはイムノクロマト法でウイルス抗原を検出する。鼻咽頭拭い液を含む検体を滴下し、約30分後までに判定ラインの有無を確認することで感染の有無を判定できる。同キットは診療の現場で陽性者を早急に検知するのに有用で、使用ガイドライン案では、陽性の場合には確定診断として扱えると記載された。一方、陽性一致率が低いため除外診断には適さず、陰性であっても確定診断のために当面はPCR検査と併用することが必要となる。

 また、無症状者に対するスクリーニング検査には現段階では推奨されない旨が明記された。検出には一定レベルのウイルス量が必要となる他、現状では検査前確率が低いことが想定され、偽陽性の可能性が高くなるためだ。前述のように陰性を確認するのにも適さない。

 性能に関しては、陽性一致率がやや低い傾向が見て取れた。添付文書には国内臨床検体を用いた試験と行政検査検体を用いた試験の2つの結果が記載されており、RT-PCR法との陽性一致率は前者が37%(10/27例)、後者が67%(16/24例)だった。また陰性一致率は前者が98%(44/45例)、後者が100%(100/100例)だった。このことからも、陽性の場合は信頼性が高いが陰性では判断が難しいことが分かる。陽性一致率はウイルスのコピー量に依存し、国内臨床検体では100コピー以上であれば83%だったが、30コピー以上では50%だった。

 とはいえ、陰性の場合に用いるPCR検査でも、検体の取得が適切にできない場合があり、PCR陰性でもその正確性は担保されるものではない。陰性の判定を得て安心したいとのニーズに応える検査方法の確立には、まだ時間がかかりそうだ。同社では今後、感度を高めるための技術開発を進めていきたいとしている。

 また、みらかホールディングスグループは同日に開催した2020年3月期決算説明会で、同キットの承認と保険適用について言及した。竹内成和社長は、同キットの発売に関して「業績への影響は想定が困難だ」と説明した。ただ、同社は週20万テストの供給を目指すとしており、1テスト6000円の検査費が決まったことで、1週間当たり12億円分が供給されることになる。医療機関でのニーズは診療所を含め幅広く、しばらくは相応の売上高増加が見込めそうだ。