2022年ESGブランド指数の上位企業や躍進する企業に共通しているのは、ESG戦略が明確で、活動に一貫したストーリーがあることだ。ここでは、水素事業や再生可能エネルギー開発を軸にグリーントランジションを推進するENEOSの取り組みを見ていく。

 石油、電力、ガス、鉄鋼のいわゆるCO₂多排出型の4業種に属する企業は従来、環境や社会のイメージスコアが上がらず、第1回、第2回の調査で上位100位以内に入ったのは、昨年(第2回)のENEOSの96位が最高だった。それが今年、同社は35位まで順位を上げた。4業種の中で同社に追随する企業は、東京ガスの113位が最高位。ENEOSが頭ひとつ抜け出していることが分かる。

 「CO₂多排出企業は、脱炭素に向けて事業構造を大きく転換する移行期にある。イノベーションによるグリーントランジションを業界に先駆けて実行することがESG評価を高めることにつながる」と、日本政策投資銀行設備投資研究所の竹ケ原啓介副所長は話す。

 今年ENEOSは、環境のイメージスコアランキングが昨年の60位から22位、社会が155位から91位、ガバナンスが127位から53位、インテグリティに至っては142位から44位へと100近くも上昇した。

■ ENEOSの躍進の軌跡と主な取り組み
<span style="font-size: 1.2em;">■ ENEOSの躍進の軌跡と主な取り組み</span>

 同社は40年に自社のCO₂排出実質ゼロを目指し、AI(人工知能)を活用した製油所の省エネに取り組むほか、次世代の成長分野として水素事業に力を入れている。30年代後半以降の本格商用化に向け、再エネを活用したCO₂フリー水素のサプライチェーン構築を進めるとともに、工場や自動車などの需要家に供給する水素ステーションネットワークの拡大を進めている。一方で太陽光を中心に再エネ発電所の建設にも積極的で、22年度中に発電能力1GW超を目指す。

 自由意見には「再エネに投資している」「エネルギーの脱炭素化を図る研究開発」「水素ステーションの建設」など、エネルギー転換に関する記述が多数見られる。グリーントランジションの取り組みが消費者に徐々に浸透し、ESG評価を押し上げているようだ。

神奈川県横浜市のENEOS横浜旭水素ステーション(写真上)。2021年8月から国内初の水電解装置によるCO₂フリー水素の商用販売を行っている。 ステーション内に設置した太陽光パネル(写真下)で発電した電力と、ENEOSグループのバイオマス発電所由来の再生可能エネルギー電力を使い、敷地内に設置した水電解装置によってCO₂フリー水素を製造。同社の水素製造センターから調達した水素と併せて販売している<br>(写真:ENEOSホールディングス)
神奈川県横浜市のENEOS横浜旭水素ステーション(写真上)。2021年8月から国内初の水電解装置によるCO₂フリー水素の商用販売を行っている。 ステーション内に設置した太陽光パネル(写真下)で発電した電力と、ENEOSグループのバイオマス発電所由来の再生可能エネルギー電力を使い、敷地内に設置した水電解装置によってCO₂フリー水素を製造。同社の水素製造センターから調達した水素と併せて販売している
(写真:ENEOSホールディングス)