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 ホンダの航空機事業子会社である米Honda Aircraft Companyは米国時間2021年5月26日、小型ビジネスジェット機HondaJet(ホンダジェット)シリーズの新型「HondaJet Elite S」を発表した。同年6月に受注を始める。搭載可能な燃料量を増やして航続距離を約222km延長。ビジネスジェットとしての利便性を向上した。

HondaJet(ホンダジェット)シリーズの新型「HondaJet Elite S」
HondaJet(ホンダジェット)シリーズの新型「HondaJet Elite S」
(出所:ホンダ)
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 ホンダによると従来機の航続距離は6人搭乗時で2159km。新型機では2380kmと1割延びた計算となる。延長分の約222kmという距離は、ホンダが本社を置く東京都港区と、同社創業の地である静岡県浜松市までを結ぶ直線距離とほぼ同じ。移動範囲が広がれば目的地とする空港の選択肢も増やせるので、航続距離はビジネスジェットの重要な競争軸の1つといえる。

* ホンダは各機の航続距離を四捨五入しているため差し引いても222kmにはならない。

 機体の最大離陸重量を約91kg増やし、燃料タンクの大きさはそのままに多くの燃料を積めるようにした。燃料量を増やさなければその分の荷物を追加で積める。安全な飛行を目的に設定する重心位置の移動許容範囲を拡大して、積載物の重量分配の制限を緩和。多くの荷物を積みやすくした。

 機体運用時の安全性も高めた。「ASAS(Advanced Steering Augmentation System)」と呼ぶ操縦支援システムの導入によって、強風下でも安全に離着陸しやすくした。パイロットの負荷も減らせる。「ステアリング(操縦系)とワイヤリング(電線・回路系)の刷新で実現した」(ホンダ広報担当)という。

 さらに、既存の航空機電子機器系統(アビオニクス)をベースに、パイロットが地上の管制官と文字メッセージでやり取りできる通信機能を追加した。ASAS同様、機体の安全性向上やパイロットの負荷軽減に寄与できる。

 ホンダは21年2月、ホンダジェットの納入機数が20年通期で31機となり、小型ビジネスジェット機のカテゴリーで4年連続の世界首位を獲得したと発表した。

 「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で20年の市場規模は縮小したが、ホンダジェットの納入数は20年後半にほぼコロナ禍前のレベルにまで回復した」(Honda Aircraft Company取締役社長の藤野道格氏)。航続距離を延ばした新型機の投入でさらなる「連覇」を狙う。

■変更履歴
ホンダからの申し入れにより、従来機の航続距離について説明を変更・追加しました。記事公開当初は「ホンダが公表する従来機の航続距離は2661km。新型機ではここから距離を1割弱延ばせる計算となる」としていましたが、これを「ホンダによると従来機の航続距離は6人搭乗時で2159km。新型機では2380kmと1割延びた計算となる」としました。また、脚注に「ホンダは各機の航続距離を四捨五入しているため差し引いても222kmにはならない」を追加しました。当初掲載時の2661kmは4人搭乗時の航続距離です。本文は変更済みです。