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西村 仁
西村 仁
ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント

 今回は穴開け加工を紹介します。穴を開ける目的は、ねじ固定の「ねじ穴」の他に、軸との「はめあい穴」や、他の部品との干渉を避けるための「逃げ穴」、旋盤加工での「センタ穴」があります。部品同士を接合するには、ねじ固定の他に、溶接やろう付け、リベット、接着といった方法がありますが、これらは一旦接合すると外すには破壊するしかありません。一方のねじ固定は、唯一脱着が可能な接合方法なので広く使われています。

 2つの部品をねじ固定するには、一方にボルトを通すための穴を開け、もう一方には穴を開けてからめねじを加工します。これらの穴開けにはドリルと呼ばれる工具を使用します。ドリルの先端は118°の角度を持った切れ刃になっており、これをボール盤に取付けて加工します。実際にドリルを手にしてみると、ドリル側面のらせんも鋭利なので、切れ刃と思いがちですが、側面は加工のガイドの役割をしています。

 ドリルで開けた穴は「きり穴」と呼び、図面には「キリ」で指示します。例えば直径5mmのきり穴は「5キリ」となります。ここで「Φ5」と「5キリ」の違いを確認しておきましょう。「Φ5」は加工方法や加工工具は加工者に一任し、加工後の穴径が直径5mmであることを意味します。これに対して「5キリ」は、直径5mmのドリルで穴を開ける指示です。すなわち5mmは穴径ではなく工具径を意味しており、加工した穴径は材質や部材の厚みによって異なりますが、おおよそ0.1mm前後大きく開きます。