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 ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)の電気自動車(EV)「ID.3」を分解し、リチウムイオン2次電池の電池パックのきょう体構造およびその材料を調査した。その結果、構造部材として主にアルミニウム(Al)合金を用いていること、部材の役割によって同合金の種類を使い分けていることが分かった。

ID.3の電池パック
ID.3の電池パック
長さ1370×幅1450×高さ125mm。電池モジュールの一部を取り外している。写真の左奥が車両の後輪側、右手前が前輪側にあたる。(出所:日経クロステック)
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 調査は専門家の協力の下で実施した。調査用の機器として用意したのは、ハンディータイプの蛍光X線分析装置である。同装置はX線を照射して対象物を構成する元素やその構成比を調べるもので、対象物を破壊せずに分析できる。そして、構成元素の組み合わせから、合金の種類を推定できる。

蛍光X線分析装置
蛍光X線分析装置
金属の成分を分析できる携行型の分析装置。調査は専門家に依頼した。(出所:日経クロステック)
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 ID.3の電池パックのきょう体でまず目につくのは、長方形の外周を取り囲む、Al合金製のフレームである。このフレームは内部が空洞のAl合金の角パイプから成り、蛍光X線分析の結果、押し出し材とみられる6000系Al合金製だと分かった。

 Alにマグネシウム(Mg)やシリコン(Si)を添加した6000系のAl合金は、押し出し性に優れ、建築用サッシなどにも使われる身近な材料である。電池パックの外周を囲むフレームは、この押し出し材のAl角パイプ4本を長方形に並べ、コーナー部分の4カ所を溶接して製作されていた。

電池パックのフレームのコーナー部分
電池パックのフレームのコーナー部分
6000系Al合金の押し出し材を長方形に配置し、コーナー部分を溶接してある。(出所:日経クロステック)
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