「iPhone 13 miniのお客様負担額が○円」――。最近、このようなポスターを家電量販店などでよく見かけるようになった。金額が1円の場合もあれば23円や24円などの場合もある。お客様負担額ではなく「支払総額」と表記しているポスターも見受けられる。内容に多少の違いはあるが、ともかく価格が度外れて安いことに変わりはない。SNS(交流サイト)でも、どの店で安売りしていたかを知らせるつぶやきが多数投稿されている。

家電量販店などで頻繁に見かけるポスター
家電量販店などで頻繁に見かけるポスター
(撮影は筆者、以下同)

 iPhone 13 miniは、米Apple(アップル)が2021年9月に発売した機種である。画面サイズはiPhone 13シリーズ最小の5.4インチだが、最新プロセッサー「A15 Bionic」を搭載しているなど性能面は他機種と遜色ない。

 執筆時点(2022年2月14日)の販売価格を確認したところ、最も安い128GBモデルはApple Storeで8万6800円(税込み、以下同)、NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクのオンラインショップでは9万8208円から10万1520円だった。最新機種が早くも値引きされているとは一体どういうことか。謎を解明するため筆者は2022年2月上旬、東京都内の大手家電量販店に向かった。

 店舗でまず圧倒されたのは値引きをアピールする大量のポスターだ。携帯大手3社がそれぞれ販促キャンペーンを実施している。第4の携帯電話事業者である楽天モバイルについては同様のポスターが見当たらなかった。

 近くに立っていた販売員に大手3社の端末価格や販売条件を尋ねると「iPhone 13 miniや(前世代の)12 miniについては(3社で)ほとんど変わらない」という。そこで、ものは試しと筆者もiPhone 13 miniを購入することにした。その過程で最新機種を安く販売する仕組みが分かってきた。

激安販売では第2世代iPhone SEが先行

 今回の値引きの仕組みは、最近の販売事情を知っておくと分かりやすい。スマートフォンの価格をめぐっては、一部店舗で第2世代の「iPhone SE」が一括1円などで販売されていることが、2021年夏から秋にかけて話題になった。背景には、2019年10月施行の改正電気通信事業法で「通信料金と端末代金の完全分離」が導入されたことがある。

 この法改正では通信料金を原資とする端末値引きが禁止となり、通信契約にひも付く端末値引き額に上限(税込み2万2000円)が設定された。これにより、スマートフォンの新規購入などを条件に月額通信料を大幅に割り引くセット割引は姿を消した。ただし、通信契約の有無に関係なく他社ユーザーにも提供する条件で、改正電気通信事業法で定める上限額を超える割引も認められた。

 第2世代iPhone SEの値引き販売では、改正電気通信事業法の規制を巧みにクリアしているのがポイントだ。店頭では、まず通信契約をするかしないかに関係なく端末代金から3万円ほど値引く。加えてMNP(番号ポータビリティー)を利用して他社から転入するユーザーや新規契約ユーザーに対しては、回線契約にひも付く2万2000円の割引も適用する。携帯電話事業者による第2世代iPhone SEの販売価格が64GBモデルの場合で5万円台の半ばから後半なので、合計で5万円以上の値引きを受けることで一括1円や一括数千円といった価格で入手できるわけだ。筆者が量販店を訪問した際もこうした販売施策は続いていた。

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