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『海と毒薬』の真実

2021/02/26

 新型コロナウイルス感染症の治療に当たる医療現場は、しばしば戦場にたとえられるが、まさかウイルスと医療者の戦いを本物の戦争と同一視する人はいないだろう。コロナ治療は、平和だからできているのである。

 弥生3月は先の大戦の記憶を呼び起こす。1945年3月10日、東京の都市部はアメリカ軍による無差別攻撃で、一晩に8万4000人以上の命が奪われた(警視庁史編さん委員会編『警視庁史 昭和前編』、1962)。この東京大空襲で、一夜にして東京市街地の東半分、区部面積の3分の1が焼失し、大量の戦争孤児が発生している。

 つくづく戦争とは恐ろしいものだと思う。平和あっての医療であり、戦争は医療をすさまじく、ねじ曲げる。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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