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 東京大学生産技術研究所の沖一雄特任教授らのグループは、湿原に生息するシカの頭数を、鳴き声やドローンの画像から推定する手法を開発した。自然環境保全地域に人が高頻度で立ち入ることなく、植生被害をもたらすシカの個体数を管理する基礎データが得られる。

シカの鳴き声をマイクロホンで録音して、解析する(資料:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
シカの鳴き声をマイクロホンで録音して、解析する(資料:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
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 開発した手法は日本最大の山岳湿原である尾瀬ケ原で実証した。手法は2つに分かれる。1つ目は、雄シカの鳴き声から時空間分布を把握し、総個体数を推定する。

シカの個体数を推定する研究の概要。環境再生保全機構の環境研究総合推進費で実施した。沖特任教授以外の共同研究者は、福島大学農学群食農学類の牧雅康准教授、野生動物保護管理事務所本社調査事業部の奥村忠誠部長、京都先端科学大学工学部のサレム・イブラヒム・サレム講師(資料:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
シカの個体数を推定する研究の概要。環境再生保全機構の環境研究総合推進費で実施した。沖特任教授以外の共同研究者は、福島大学農学群食農学類の牧雅康准教授、野生動物保護管理事務所本社調査事業部の奥村忠誠部長、京都先端科学大学工学部のサレム・イブラヒム・サレム講師(資料:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
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 湿原に3個以上のマイクロホンを設置し、繁殖期の雄シカの「フィーヨフィーヨ」という特徴的な鳴き声を録音する。鳴き声がマイクロホンに届くタイミングのずれから、複数の雄シカの鳴いた場所を即時的に特定する。

 沖特任教授は「いつ、どこにいるかを鳴き声から評価する手法は、おそらく世界初ではないか」と言う。ただしこの手法は有効に使える時期に制約がある。繁殖期の9月中旬から11月までだ。

尾瀬の湿原に設置したマイクロホン。太陽光パネルによる自家発電で電力を供給する(写真:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
尾瀬の湿原に設置したマイクロホン。太陽光パネルによる自家発電で電力を供給する(写真:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
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鳴き声からシカのいる位置を可視化。移動状況や分布が分かる(資料:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
鳴き声からシカのいる位置を可視化。移動状況や分布が分かる(資料:東京大学生産技術研究所・沖一雄特任教授らの研究グループ)
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