全1277文字

 2022年8月8日午前9時ごろ、名古屋市中区栄の超高層ビル建設現場から鋼板が落下し、歩行者が軽傷を負った。地上約140mから落下した重さ約5kgの鋼板が、歩道の路面で跳ねた後に歩行者の右足に当たった。この現場では7月26日に、隣接する歩道が陥没するトラブルが起こったばかり。相次ぐ重大事故に、施工者である竹中工務店の安全管理体制が問われている。

建設中の中日ビルの西面。当日は30階部分で鉄骨の溶接作業中だった(写真:名古屋市)
建設中の中日ビルの西面。当日は30階部分で鉄骨の溶接作業中だった(写真:名古屋市)
[画像のクリックで拡大表示]
落下したエレクションピース(写真:名古屋市)
落下したエレクションピース(写真:名古屋市)
[画像のクリックで拡大表示]

 鋼板の落下事故があったのは、名古屋市中区栄4丁目にある中日ビルの建て替え工事の現場だ。建設中の超高層ビルの30階部分から落下した鋼板のサイズは縦11cm、横25cm、厚さ22mm。現場の西側に隣接する幅約12mの久屋大通を越え、向かい側の歩道に落下した。工事の発注者は中部日本ビルディング(名古屋市)、設計・施工者は竹中工務店だ。同社は7月26日に起こった歩道陥没事故の復旧対応中だった。

 落下したのはエレクションピースと呼ぶ鋼板で、溶接前の柱の継ぎ手を仮留めしておくための部材だ。溶接後に切断して除去する。落下事故当日、現場では鉄骨柱の溶接作業を進めており、切断したエレクションピースが何らかの理由で地上に落下した。竹中工務店の広報担当者は原因について、「鋭意調査中」としている。

 事故発生から約3時間後の8月8日午前11時50分ごろになって、竹中工務店はようやく、歩道を管理する名古屋市中土木事務所に通報している。軽傷を負った歩行者がそのまま出勤したため事実確認が遅れ、通報までにタイムラグが生じた。同日午後3時ごろには中土木事務所と愛知県警、竹中工務店が鋼板の落下箇所の現地確認を実施。中土木事務所は10日付で、道路法に基づく命令書を竹中工務店に出し、落下物によって損傷した歩道の復旧を求めた。期限は8月31日だ。