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2021年1月から日建設計はデザイン戦略の運用を開始した。同社120年の歴史で初となる取り組みだ。組織の拡大にコロナ禍のリモートワークが重なり、危機感を抱く1000人超がデザイン戦略づくりに参加した。日本最大の組織設計事務所に大きなうねりが起きようとしている。

 「コロナ禍でなければ、あれだけのエネルギーはかけられなかったかもしれない」。日建設計の大松敦社長はそう振り返る。確かにそうだ。グループ会社を含めると3000人近い大組織が“社員からのボトムアップ”によってデザイン戦略を作成することなど、平常時であればお題目に終わっていたに違いない。

 日建設計が、同社として初めてデザイン戦略「日建デザインゴールズ」を2020年末に作成し、21年1月から運用を開始した〔図1〕。

〔図1〕アイコンは鉛筆描きで「常に更新」を明示
〔図1〕アイコンは鉛筆描きで「常に更新」を明示
日建設計初のデザイン戦略は「日建デザインゴールズ」という形でまとまった。同社のイントラネット上で閲覧する。上はそのトップ画面。計52のゴールズを15のカテゴリーに分類して掲載した。それぞれのアイコンが鉛筆タッチで描かれているのは、「常に更新していく」というメッセージを伝えるため(資料:日建設計)
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 発案者は社長時代の亀井忠夫会長。亀井氏は、社長就任から4年目となる20年1月、山梨知彦氏と大谷弘明氏(ともに常務執行役員)を「チーフデザインオフィサー(CDO)」という新しいポストに任命。デザイン戦略の作成に着手した。

亀井 忠夫氏
亀井 忠夫氏
日建設計会長。1955年生まれ。81年に日建設計入社。「さいたまスーパーアリーナ」や「東京スカイツリー」、「東京駅八重洲口開発グランルーフ」、「YKK80ビル」などを担当。2015~20年に社長を務め、21年1月から現職(写真:稲垣 純也)
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